JFEスチールは、石炭運搬船カーゴホールド(貨物倉)の腐食を抑制する高耐食性厚鋼板「JFE-SIP-CC」を開発、JFE物流が発注した石炭運搬船に初採用された。
石炭運搬船のカーゴホールドでは、石炭の硫黄分が結露水と反応して希硫酸水溶液が生成され、鋼板を激しく腐食するという。この腐食がカーゴホールド内への浸水などの一因と考えられており、国際船級協会連合により、塗装や腐食に対する予備厚の付与が義務付けられている。しかし、塗装による塗膜は積荷や荷役装置との接触によりはく離するため長期の防食効果は期待できず、再塗装が必要となる。また、局所的には腐食減耗量が予備厚を上回って鋼板の交換が必要となるケースもあり、メンテナンスコストを増大させ、さらに腐食が広範囲に渡る場合は、船の寿命自体に影響を与えることになる。
防食メカニズム そこで同社は、最適な合金元素を添加することにより、希硫酸による腐食減耗を抑制する耐食性厚鋼板を開発した。この鋼板が腐食した際に溶出する合金元素が、保護性の高い緻密な錆層を形成し、この錆層が石炭由来の硫酸イオンの鋼材表面への侵入をブロックし腐食の進行を遅らせる。実験室での石炭積載腐食試験では、鋼板の寿命が大幅に延びることが確認されており、石炭運搬船のメンテナンスコストの削減が期待される。また、この鋼板は、従来鋼と同等の溶接性や加工性を有しており、船舶建造に際しての特別な施工管理も必要しない。
また、今回の開発にあたっては、商船三井の協力の下、同社が所有しているケープサイズの石炭運搬船において実際のカーゴホールド内での暴露試験も実施したが、実験室での腐食試験と同様に開発した鋼板の優位性が確認されたという。