日本電子( http://www.jeol.co.jp )は、収差補正装置を備えた最高加速電圧300kVの原子分解能電子顕微鏡「JEM-ARM300F」を開発、販売を開始した。同品は、十二極子を採用した自社製補正装置の搭載により、分解能を63pmまで向上することに成功した(STEM像分解能)。また、顧客のニーズに応じて、高分解能観察を重視した超高分解能構成と、高感度分析やその場観察を重視した構成を選択できるようになったという。官民の研究開発拠点や半導体企業に向けて販売を行っていく。
新製品の主な特徴は以下のとおり。
- 超高分解能像観察
自社製収差補正装置の採用により走査透過像(STEM像)において63pm(加速電圧300kV)を実現(照射系球面収差補正装置搭載時)した。
- 高輝度・低エネルギー分散の特長を有する高性能冷陰極電界放出電子銃を搭載
新規設計の高性能冷陰極電界放出電子銃を標準構成。色収差が低減された高輝度の電子ビームにより高分解能で観察・分析ができる。
- 幅広い加速電圧設定
加速電圧300 kVと80 kVが標準構成。オプションにて、顧客の要望に応じた加速電圧に対応する。
- 本体とインテグレーションされた収差補正装置
自社開発した球面収差補正装置を結像系(TEM収差補正装置)および、照射系(STEM球面収差補正装置)に搭載可能。
- 収差補正制御System
自社開発のJEOL COSMO(JEOL Corrector System Module)システムにより収差補正装置の自動調整を実現した。
- 用途に応じた二種類の対物レンズポールピース
2種類の対物レンズポールピースを開発。
- ドライ試料予備排気と高真空を実現した真空排気系
予備排気系に標準でターボ分子ポンプを装備するとともにカラム排気系を強化することで高いレベルの真空を実現し原子レベルでの像観察や分析において汚染や損傷を最小化した。
- 高安定な鏡筒・架台、安定化試料ステージ、高い電気的安定度
330mmの鏡筒直径で機械的剛性を高め、JEM-ARM200Fで培った安定化技術を基に機械的・電気的安定性、耐環境性を強化した。
- 広範な信号検出装置群
大口径100mm2までのEDS(エネルギー分散型X線分光器)やEELS(電子エネルギー損失分光器)の装着に加え、反射電子検出器など、最大4種類のSTEM観察検出器が装着可能。環状高角度散乱暗視野像、環状低角度散乱暗視野像、環状型明視野像、明視野像の同時観察が可能。