JFEスチールは、平成26年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)において、「革新的熱加工制御技術を駆使した高性能厚鋼板の開発育成」で受賞したと発表した。
厚鋼板は造船・建築・エネルギー分野など幅広く用いられているが、近年、軽量化や省資源などを目的に高強度化が進められてきた。一方で安全性向上の観点から、アレスト性能(鋼構造物で亀裂が発生したときに、その進展を止めて破壊を防止する性能)や変形性能などの従来にない高い性能も求められるようになってきており、同社は高い強度と安全性をともに備えた厚鋼板の開発に取り組んでた。
同社は、鋼板を構成する結晶粒を特定の方位に揃える「集合組織制御技術」を活用し、亀裂の伝播を抑制する集合組織を優先的に発達させることにより、高いアレスト性能を持つ厚鋼板を開発した。また、同社独自のTMCP(Thermo-Mechanical Control Process(熱加工制御:制御圧延、加速冷却を駆使してオンライン製造で鋼材の強度や靱性を向上させる技術)により鋼板のミクロ組織を軟質相と硬質相の複相組織とし、その硬さや構成比を変化させる「第2相組織制御技術」により、従来技術では達成しえなかった高強度と高変形性能を持つ厚鋼板を開発した。
この成果により、同社では様々な分野で高性能鋼材の開発・実用化を達成している。例えば、造船分野では極厚高強度高アレスト鋼、建築分野では高耐震性高強度鋼(HBL)などが開発成果として挙げられる。
今回の受賞は同技術が、厚鋼板の強度・安全性を飛躍的に向上させることにより、造船分野や建築・エネルギー分野など社会インフラの発展に大きく寄与したこと、加えて開発に携わる研究者への指導・育成の成果が高く評価されたことによるもの。