日本産業機械工業会、第39回優秀環境装置表彰の受賞装置を決定
日本産業機械工業会はこのほど、「第39回優秀環境装置表彰」の受賞装置を決定、16件の応募から8件の装置が表彰された。受賞装置は以下のとおり。
経済産業大臣賞
「燃焼排ガスからのCO2回収装置」 三菱重工
関西電力とともに 1990年から開発を開始。従来食品用に小規模で用いられていた MEA(モノエタノールアミン)を吸収液として用いたプロセスをベンチマークとして、温暖化対策用に大幅な省エネ、大型化、低コスト化実現。1999 年には開発した新技術にてマレーシアに尿素合成用CO2回収プラント初号機を納入。開発内容としては、省エネ性の非常に高い吸収液、省エネプロセス、吸収液消費量削減方式、吸収塔と再生塔のコンパクト化などを実現した。
経済産業省 産業技術環境局長賞
「無端ろ布走行式フィルタープレス(クボタランフィル)」 クボタ
フィルタープレスはさまざまな市場、用途において使用されているが、エンドユーザー200社以上にヒアリングした結果、「維持管理での作業の多さ、トラブルの多さを減らしたい」というニーズが多かったという。
具体的には
・ろ布交換作業や脱水ケーキの掻き落とし作業などに手間がかかる。
・部品の交換に時間と費用がかかる。
・ケーキ剥離、洗浄水飛散、開閉板などのトラブルが頻繁に発生し、安定運転できない
などの意見が多く挙げられた。また、更新需要が多いため、既設よりも大きな機体および荷重では設置できない等のニーズもあった。そこで、主に下水処理場や浄水場といった官需向けに販売してきた無端ろ布走行式フィルタープレス(クボタダイナミックフィルター)の特長を活かしつつ、「維持管理コストを半減する」、「コンパクト」なフィルタープレスを開発コンセプトに掲げ、開発に着手した。
中小企業庁長官賞
「小型軽量 電線剥離機(電線マン ADM-K05)」 アスク
同社は創業時より手のひらサイズや小物の精密部品加工、試作部品加工を行ってきた。一方、廃電線のリサイクルにおける電線剥離機は、従来、大型のものが多く、小型マシンがほとんどなかった。障害者施設をはじめとするユーザーからの要望により、これまで同社が培ってきた技術およびノウハウを活かし、小型軽量の電線剥離機を開発した。
日本産業機械工業会会長賞
「噴流型流動促進式水域浄化装置(多機能型水質浄化装置)」 エビスマリン
1992年度に初号機を開発。それまでの閉鎖性水域・海域の水質浄化装置(曝気循環装置など)は、消費電力が大きくかつイニシャルコストが高いものであったが、省エネ・低コスト製品を目指し開発した。現在までに延べ約300基以上を国内および海外へ納入している。
「合流式下水道改善のための簡易型繊維ろ過施設」 アタカ大機
同社は、SPIRIT21(下水道技術開発プロジェクト)における開発技術として「特殊スクリーン付きスワール及び沈降性繊維ろ材を用いた上下向流可変式高速ろ過法」を先行技術としてを開発し、平成16年12月にSPIRIT21委員会より評価を受けた。その後、施設の構成を簡素化し、維持管理を容易にすることを考慮しつつ、先行技術と同等の処理性能を期待できる技術として本技術を開発した。すなわち、本技術は、既設の最初沈殿池や雨水沈殿池等の浅い土木躯体を容易に改造して設置可能であり、処理場における最初沈殿池への流入水またはポンプ場から排出される未処理下水を対象に、放流汚濁負荷量の削減を図る施設である。
「クラゲ洋上処理システム」 東北電力/姫路エコテック
クラゲが引起こす取水障害に対し、日頃より問題意識を持っていたメンテナンスを担当する者が「クラゲが海水中で自然消滅する」事象を確認し、疑問を抱いたことを基点とし、平成15年度より装置の開発に着手した。その後、各種試験や運用の中で、従来とまったく異なる発想でのクラゲの捕捉手法を追求しつつ、産業廃棄物とさせず、かつ水質に影響を与えない処理を模索して改善を積重ねた結果、流入するクラゲを常時80~90%程度捕捉し、クラゲの生態を活用することにより環境に優しいプロセスで消滅させるという画期的なシステムの開発・実用化に成功した。
「高効率真空式ガス温水ボイラ(GTLシリーズ)」 日本サーモエナー
地球温暖化防止や環境負荷低減の観点からライフサイクルコストやCO2削減を重視するエコロジーなニーズが増えており、同社では、排ガスの顕熱を最大限に回収できるようにガス焚き専用缶体で、ボイラ効率を95%とした真空式ガス温水ボイラ GTL シリーズを開発した。GTLシリーズは、従来比 5%以上の定格ボイラ効率の向上と、部分負荷効率の向上を果たすと同時に、クリーンな低NOxバーナを搭載した高効率温水ボイラである。
「トンネル工事用電気集じん器〔e'-DUSCO(イーダスコ)〕」古河産機システムズ
産業用電気集じん装置メーカーである同社が今までに培ってきた排ガス集じん技術を応用し、開発に着手した。本装置は高集じん効率でありながら大幅な省電力化を追求し、製品化に成功したことにより、二酸化炭素排出量の削減という課題を解決するだけでなく、東日本大震災に伴う国内原子力発電所の停止による電力会社からの節電要請に対応するトンネル工事用集じん器として活用が可能である。
同工業会では、1974(昭和49)年から経済産業省(通商産業省)の後援を得て、環境保全技術の研究・開発および優秀な環境装置の普及の促進を図ることを目的として「優秀環境装置の表彰事業」を実施しており、今回で第39回を迎えた。全国から応募のあった環境装置を審査委員会において、独創性、性能、経済性、将来性等の観点から厳正な審査を行い、表彰している。募集対象は、大気汚染防止装置、水質汚濁防止装置、廃棄物処理装置(再資源化装置)、騒音・振動防止装置、悪臭処理装置、土壌・地下水汚染修復装置、その他地球環境保全に関する装置で、実証プラントを含め原則として6ヶ月以上順調に稼動しているもの。