自動車技術会は、自動車工学および自動車技術の向上発展を奨励することを目的に1951年より毎年実施されている「自動車技術会賞(第63回)」の受賞者を発表した。技術貢献賞では、「ディーゼルエンジン用コモンレールシステムの開発と実用化への貢献」篠原幸弘 氏(デンソー)、「トライボロジー技術を通じたAT・ベルトCVT技術の進歩発展への貢献」加藤芳章 氏(ジヤトコ)が受賞した。受賞理由は以下のとおり。
「ディーゼルエンジン用コモンレールシステムの開発と実用化への貢献」篠原幸弘 氏(デンソー)…ディーゼル車の排出ガスクリーン化と高性能・高効率化を両立するための燃料噴射装置としてコモンレールシステムは必要不可欠となっている。受賞者は、特に初期のコモンレールシステムに対する高圧燃料噴射のニーズに応えるべく、最高145MPaの噴射圧力を180MPaまで実現する事に多大な貢献をした。これにより厳しい排出ガス規制にも対応可能となり、大気環境の改善にも寄与した.その後も噴射圧力のさらなる高圧化(最高300MPa)や圧力センサを内蔵することで世界各国のさまざまな燃料性状にも安定して高性能を発揮できる世界初の新技術の市場投入に尽力した。以上によりディーゼル用コモンレールシステムの性能改善や新技術の実用化に貢献した。
「トライボロジー技術を通じたAT・ベルトCVT技術の進歩発展への貢献」加藤芳章 氏(ジヤトコ)…現在市販されている自動変速機(AT)ならびに金属ベルト式無段変速機(CVT)は、変速機に関わるメカニズムの解明、動力伝達の効率向上、構成要素の長寿命化などの多くの技術開発が投入され、自動車の燃費向上と走行性能の向上に寄与している。そのような多くの技術開発の中で、受賞者は動力を伝達する要素の間のトライボロジーの知識を通じて、ATにおけるクラッチの摩擦特性と耐熱性に関する技術開発、ならびにベルトCVTにおけるトルク伝達メカニズムの解明と設計基礎技術の確立に研鑽するとともに、産学協同国家プロジェクトの一つのテーマのリーダーとして活躍し、CVTの効率向上技術の確立に成果をあげた。これらの技術開発への取り組みと成果は、変速機技術の進歩発展に多大な貢献を果たした。
このほか、浅原賞学術奨励賞で徳田茂史 氏(トヨタ自動車)「Adjoint法による吸気ポートの形状最適化」、小坂享子 氏(アドヴィックス)「Influence of Pad Wear on Pad Dynamic Stiffness」、本間亮平 氏(日本自動車研究所)「前方車両衝突防止支援システムの効果予測 -危険予期が低いドライバの衝突予知警報に対する反応特性-」、白石泰介 氏(日産自動車)「低温プラズマによるHCCI燃焼自着火促進技術に関する研究」、大江準三 氏(トヨタ自動車)「自動車用電波技術の進歩発展への多大な寄与」、槇前辰己 氏(マツダ)「自動車用ボルト締結技術の研究開発への多大な寄与」など合計で25件、69名が受賞した。
なお、授賞式は5月23日(木)にパシフィコ横浜で行われる。