三菱重工業が京都大学医学部附属病院に納入した追尾照射機能搭載の放射線治療装置Vero4DRT(販売名:線形加速器システムMHI-TM2000)は、肺がん治療に加えて肝臓がん治療にも用いられ始めたと同社が発表した。肺がんを対象としたこれまでの追尾照射による治療結果から、病巣が捉えにくいとされてきた肝臓がんに対しても同品の追尾治療が効果的であると期待されることから、同病院では3月1日より肝臓がんに対しても追尾治療を開始した。肝臓がんを対象とした放射線のリアルタイムモニタリングによる追尾照射治療は、国内では今回が初めてだという。
同品は、呼吸などにより揺れ動くがん患者の病巣をリアルタイムにモニタリングしながら追尾し、狙った病巣のみをピンポイントで連続照射できる最先端医療システム。がんの放射線治療では、体内のがん病巣へ正確に放射線を当てながら、周辺の正常細胞への影響をいかに最小化するかが重要。しかし、体内では病巣が常時揺れ動くため、リアルタイムに病巣の動きを確認しながら照射することはこれまで容易ではなかった。
追尾照射機能を搭載した同品は、このような要請に応えるために開発された装置。これまで困難とされてきた揺れ動く病巣に対して、高精度で放射線照射を実現し、正常組織への副作用を極力回避するだけでなく、患者・医療スタッフ双方の負担を大きく軽減する。
また、体内臓器への放射線治療では、それぞれの臓器に合った体内留置マーカーへの対応が時として必要となるが、今回の肝臓への治療範囲拡大は、同品が日本で承認された新しいマーカーへも対応できるようになったことで、適用可能となった。今後、さらに治療が難しいとされる膵臓がんなどの治療への道も、拓かれつつあるという。
同社は、2008年1月に同品の薬事承認を取得したことで医療機器分野へ本格参入、2010年には、追尾照射機能付き装置として製造販売承認を取得して、国内外で営業活動を展開している。