三菱重工業は、高放射線環境など人が近づけない場所を自由に移動し、伸縮梯子の先に搭載したロボットアームで高さ8mまでの高所作業ができる遠隔作業ロボット「MHI-Super Giraffe(MARS-C)(スーパージラフ)」を開発した。アームや先端工具の交換により、バルブの開閉や除染など多様な作業に対応する。
同機は移動機構や作業機構にモジュール設計思想を取り入れており、今後他社による新モジュール開発への参入も促進し用途拡大に向けた高機能化を加速させるため、各接続部の技術情報を公開していく。
同機は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」による委託を受け、東京電力の福島第一原子力発電所での作業を想定し、バルブ開閉、除染、漏洩検出・特定、切断などに対応できるように開発したもの。リチウムイオン二次電池を動力源として、標準的なコンピューターネットワーク規格のイーサネットを使った遠隔操作により、連続5時間の稼働が可能となる。
同機は、台車モジュール(移動機構)、荷揚げモジュール(伸縮梯子機構)、搭載モジュール(ロボットアーム部)、エンドエフェクターモジュール(先端工具)の四つのモジュールで構成されている。台車モジュールは4輪駆動4輪操舵方式によりスピン(その場での回転)や真横への移動が可能で、狭い場所での機動性に富み、高所作業時はアウトリガーを伸ばして安定性を高める。また、荷揚げモジュールには5段伸縮式を採用。8mの高さで150kg以上の荷揚げ能力を発揮する。ロボットアーム部の搭載モジュールは、人の腕と同じような七つの関節を持ち、高い自由度と小型軽量性を確保。エンドエフェクターモジュールは、バルブの開閉が可能で、着脱は遠隔操作により空気圧で簡単に行える構造を搭載している。
作業時に台車の転倒を防止する機能として、ロボット動作による姿勢変更に対して重心位置をリアルタイムで計算し、アウトリガー支持範囲から重心が外れそうになった際に、操縦者へ警告を表示するアラーム機能と、各アウトリガーに搭載した荷重センサーの値を常に監視し、浮き上がる前に動作を停止させる機能とで、二重の転倒防止インターロックを備えた。また、各モジュール間のインターフェイスには、駆動電力や通信、油圧など各種ラインの簡便な接続方式を採用。その関連情報をすべて公開し、同社以外の企業などに開発参入をアピールしていく。
台車本体に搭載している駆動バッテリーおよび充電システムは三菱自動車工業製電気自動車(EV)i-MiEV(アイ・ミーブ)の技術を同機用にカスタマイズ。高信頼性と大容量を両立した電池を用いることで、4トンの質量がありながら、15°傾斜面での走行や平地における速度6km/hでの走行を可能とした。また、8mの高所でのマニピュレーター作業を含む想定作業での連続5時間稼働も実現した。