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産総研など、凝集しにくい粒径約20nmのコアシェル型ナノ粒子を開発

 産業技術総合研究所は、北興化学工業と共同で、凝集しにくい粒径約20nmのコアシェル型の酸化セリウム(セリア)/ポリマーハイブリッドナノ粒子(セリアナノ粒子)とその粒子を含有する樹脂フィルムを開発した。

 映り込みが大きいと映像などが鮮明に見えないため、ディスプレイ表面には反射防止フィルムが使われている。反射防止フィルムの高性能化には、高屈折率層の屈折率を上げることがその方法の一つである。一般的に樹脂フィルム(高分子)は屈折率が低いため、酸化物との複合化により屈折率の向上が図られるが、樹脂フィルムと複合化するには、ナノ粒子を導入する際に凝集させずに分散させる必要がある。一般にナノ粒子は体積に対する表面積が大きいため凝集しやすく、粒子の凝集は光の散乱要因となり樹脂フィルムの透明性を悪くする。このため、樹脂フィルムに凝集させずに分散できる高屈折率の酸化物ナノ粒子が待ち望まれていた。

 これまでコアシェル型のセリアナノ粒子は小さくても粒径50nmまでのものしか作製できなかったが、今回、粒子の構造や生成機構の解明を通じて粒径約20nmのセリアナノ粒子の作製に成功した。このセリアナノ粒子を高濃度に含有する樹脂フィルムは、高屈折率と透明性の両方を兼ね備えており、高性能な光学フィルムへの応用が期待される。これまで数g程度しかサンプルを供試できなかったが、量産化の研究開発を推進し、北興化学工業から100 g~1 kg程度提供可能となっている。

 今後は良好な分散性や20nm程度の粒径といった特長を活かしながら、材料系の拡大(ドーピング技術開発、他元素酸化物ナノ粒子開発)などを図り、光学フィルムだけでなく、さまざまな用途への応用の可能性を探る。

コアシェル型セリアナノ粒子の分散液(a)と粒子含有樹脂フィルム(b) 粒径20 nmの場合は粒径の大きいものに比べて透明性が高いコアシェル型セリアナノ粒子の分散液(a)と粒子含有樹脂フィルム(b) 粒径20 nmの場合は粒径の大きいものに比べて透明性が高い