日本SGIは、コマツの茨城工場に、建設機械の設計・開発用 バーチャルリアリティ装置「4面VRシステム」を導入した。本システムは茨城工場内に建設された試作工場に設置され、稼働開始した。
コマツでは、2007年1月に大型建設機械の生産拠点として茨城工場を竣工し、鉱山で使用されるダンプトラックなど主に海外向けのタイヤ式大型機械を開発している。海外向けの大型機械は受注生産が多く、設計・開発の効率化が課題の一つとなっている。今回コマツは、大画面での立体投影によって操作性や整備性などを詳細に検討・評価できる本格的なバーチャルリアリティ装置を導入し、開発力の向上とスピードアップを図る。
稼働を開始した4面VRシステムは、立体投影された建機の中に運転者や整備者があたかも実際に入り込んでいるかのように体感できる没入型システム。実物大で立体的に見ることでデザイン性を検討したり、運転席からの前後左右の視界性や安全性をチェックしたりすることができる。ポンプやエンジンの点検についても、実物を扱うかのように確認でき、 整備性や小修理性の検討も正確に行える。運転者と整備者の動作や視点あるいは機械の動きを、第三者が別のモニターを通して客観的に確認できることも大きな特徴。
同システムは、正面、左右面、床面の計4面のスクリーン、4台の米クリスティ・デジタル・システムズ社製プロジェクター、6台の独ART社製モーションキャプチャー用光学式カメラを備えた大規模なバーチャルリアリティ装置。横幅3.8m、高さおよび奥行きがそれぞれ2.4mのスクリーンに大型のダンプトラックやホイールローダーなどの機械を実物大で投影できる。
立体視処理には、NVIDIA社のGPU最上位機種が搭載された日本SGIのビジュアライゼーション専用システム「Asterism(アステリズム)」を4台導入している。自動立体表示化ソフトは、仏TechViz社の「TechViz XL」を利用している。パソコンで作成したCADモデルを変換作業なしにバーチャルリアリティ空間に表示することが可能になり、CADデータを作成してすぐに検討を始めることができる。
コマツでは、1996年から建設機械・車両の設計・開発システムとして3次元CADを積極的に導入し、2004年からはすべての新機種開発が3次元CADを利用して行われてきた。一方で、開発する建機の視界性、安全性、整備性、小修理性の検討および実装評価を行うには、一般的なパソコンのディスプレイでの作業では実際の検討や評価とのギャップが避けられず、より大画面での立体投影によって詳細に検討・評価できるシステムが求められていた。2011年5月には大阪工場に4面VRシステムを初めて導入し、稼働から約1年半で開発期間の短縮や試作機開発コストの削減など多くの効果が出ているという。今回はコマツにおいて、大阪工場に次いで2番目の本格的なバーチャルリアリティ装置の導入となる。
コマツの茨城工場に導入された4面VRシステム