日本粉末冶金工業会( http://www.jpma.gr.jp/ )はこのほど、「平成24年度日本粉末冶金工業会賞」を発表した。同賞は、1979年度に粉末冶金工業普及事業の一環として創設、2012年度で34回目となる。
同賞は、工業会事業に貢献した個人を表彰する「業界功労賞」と優れた粉末冶金製品を表彰する「新製品賞」、優れた原料粉末を表彰する「原料賞」、優れた製造設備を表彰する「設備開発賞」からなる。「新製品賞」は、さらに「デザイン部門」、「材質部門」、「製法開発部門」に分けて審査、2003年度から、選考委員会で特に優れた受賞案件とされたものに「工業会大賞」を授与している。また、賞の対象にならなかった応募の中から、特徴のあるものを「奨励賞」として表彰している。
今回は工業会大賞、設備開発賞は該当なしで受賞者は以下のとおり。
新製品賞・デザイン部門
「エコカー用排気可変動弁部品の開発」ダイヤメット
粉末冶金の特徴を活かしたデザインであり、横穴加工廃止、シール材廃止、止まり穴の型出しなどが実現できたこと、また、2つの部品を組み合わせた設計も効果的であり、今後の展開拡大も期待できる点が評価された。
「ポペットバルブ式EGR用途焼結軸受の開発」ダイヤメット
6mass%以上もの黒鉛を均一分散させた材料を開発し量産を実現した点、異形内径形状を面付けしている点などの新規性と、大幅なコストダウンにより他材質からの切替が実現され今後の広がりが期待できる点が評価されました。
「CNCプレス技術の限界に挑戦した複雑形状トルクインバーター部品の開発」住友電気工業
ボス部、ツバ部等の圧縮比や厚さが大きく異なる難易度の高い部品をCNCの技術を極限まで使いこなして生産している点、他工法が主流となりつつあった分野で焼結化した点、量産の数量が評価された。
「クリーンディーゼル車のエンジンバランサー用カップリングの焼結化」ダイヤメット
突起部の密度確保など粉末冶金の特徴を活かし、加工レスのネットシェイプで高硬度材を高精度で量産している点、他工法から切替えた点、今後展開が期待できるクリーンディーゼル用途である点が評価された。
「CVT用パーキングサポート部品における機能付加開発」日立化成工業 粉末冶金事業部
焼結の特長を生かし2部品の一体化で部品点数を削減した点、シンメトリックで無い形状で、薄肉で圧縮比の大きく異なる段部を有する成形の困難な形状を金型構造と剛性の改善で達成している点、量産の数量が評価された。
「軽量化遠心クラッチ用焼結部品の開発」日立化成工業 粉末冶金事業部
金型設計、成形、焼結、サイジング、熱処理を通して検討・改善を行い、大径で薄肉かつ凹凸のある部品を非常に高い精度で焼結化した点が評価された。
新製品賞・材質部門
「超薄型モバイルノートPC用ファンモータの低騒音含油軸受」ポーライト
トレードオフの関係にある耐摩耗性となじみ性を金属組織設計で両立させた点、コストダウン、小型動圧軸受の領域を焼結含油軸受で置換えた点、モバイルノートPC市場で採用された点、量産数量が評価された。
原料賞
「ドリル加工性に優れた焼結材を実現する快削性偏析防止処理混合粉」JFEスチール
工具寿命を大幅に改善した点、硫化処理廃止により環境改善に繋がる点、今後の適用拡大が期待できる点が評価された。
奨励賞
「アイドリングストップ用センサー一体型高精度カムスプロケット開発」住友電気工業
部品を一体化した点、肉厚が大きく異なりかつ非対称部品を金型構造や成形作動方法の改善により型出しした点、重量軽減のためのデザインが評価された。
「硬質粒子の耐摩耗性を向上させたバルブシート材料」ファインシンター
希土類金属を添加し、酸化物を点在させる手法の新規性、材料コストが低減できた点、他のバルブシート材への展開が期待できる点が評価された。
「在来線高速車用焼結制輪子ライニング」ファインシンター
ブレーキ性能に加えて乗り心地まで配慮して材料設計されている点、鉄道分野での採用、今後の海外を含めた適用拡大が評価された。