古川機械金属グループの古河キャステックは、新たに開発したアルミ溶湯(溶解したアルミニウム)への鉄分溶出を抑制する特殊鋼「トケナイト」を用いて、アルミダイカスト製品製造設備で使用される消耗部品類を製品化し、アルミダイカスト業界向けに販売を開始する。
アルミダイカスト製品は、自動車の軽量化のため車載部品として広く使用されているが、近年、燃費向上やエコカー開発等を背景に、車両の軽量化に対する要望はますます強まっており、アルミダイカスト製品の薄肉化とそれに伴う強度の向上が重要な課題となっている。強度の向上のためにはこれまでアルミダイカスト製品製造過程において消耗部品類から生じていたアルミ溶湯への鉄分の溶出をいかにして防ぎ不純物を排除するかが重要となる。
「トケナイト」は、特殊な製造方法により素材表面にアルミ溶損に強い特殊皮膜を形成しているため、これを消耗部品類に用いることで、アルミ溶湯内で鉄分の溶出を抑制することから、アルミダイカスト製品の強度が向上する。ねずみ鋳鉄およびカーボン製品に比べアルミ浸食に強く、アルミ溶湯への鉄分の溶出(コンタミ)量は、ねずみ鋳鉄(FC250)に比べ1/1600まで抑えることが可能。これは日本軽金属と共同で、Al溶湯99.99%、温度750℃、試験時間12時間の条件で性能評価した結果の数値。 また、温度変化によって起きる製品の膨張、収縮については、耐熱鋳鋼であるため、ねずみ鋳鉄、セラミック、カーボン製品に比べ伸びがあり、急速な温度変化に強く、破損の恐れが少ない。
さらに、ハンドリング等に伴う外的衝撃については、鉄系素材であるためセラミック、カーボン製品のように容易に破損することはない。カーボン製のるつぼを用いて間欠操業を行う場合には、毎回操業終了時にるつぼの破損を回避するためにアルミ溶湯のくみ出しが必要となるが、トケナイト製るつぼではそのまま凝固させることが可能でくみ出しが不要である。ねずみ鋳鉄、セラミック、カーボン製品に比べ、鋳鋼素材であるため機械加工が容易で溶接も可能である。
これまでのアルミダイカスト製品製造における鉄分溶出への対応策としてはセラミック製品あるいは黒鉛製品を用いるか、鋳物類に特殊なコーティング処理を施すことしかなかったという。しかし、セラミック製品は高額で破損しやすく、黒鉛製品の耐久性も十分とは言えない。コーティング処理は効果の持続性が不安定で消耗部品の寿命延長も厳しいという大きな課題があった。
アルミダイカスト製品製造設備で使用される消耗部品類