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オリンパスなど、障害物を避け治療可能なマニピュレーターと小型手術支援ロボットの試作機

小型マニピュレーターの概観小型マニピュレーターの概観 東京大学とオリンパスは、NEDOが進める「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発プロジェクト」において、「胸部外科用インテリジェント手術支援ロボット」技術の開発を担当し、全7自由度(自由に動かせる方向の数)を有し、ひじに相当する関節を用いて、肋骨などの障害物を避けながら患部にアクセスして操作が可能なマニピュレーター(ロボットの手や腕にあたる部分)と、それを制御する小型手術支援ロボットの試作機を完成させた。

 今回の開発された技術は、体表面に開けた数個所の小さな穴から内視鏡や器具を挿入して手術を行う内視鏡下手術を、あたかも処置具先端をつかんでいる感覚でマニピュレーターの多関節を意識せずに自在に操作することができる「マスタ・スレーブ型」と呼ばれる手術支援ロボット。冠動脈バイパス術に代表される胸部外科の領域において適用されることを目指し開発しされたもの。

ロール関節を有する先端3自由度処置具ロール関節を有する先端3自由度処置具 胸部は肋骨で囲まれているため体表面からのアクセスが難しいだけでなく、呼吸や拍動により絶えず動きのある手術の難易度が高い臓器・部位を対象とすることが多くなる。その中でも、拍動下冠動脈バイパス術(患部の血管に対して湾曲針を引っ掛ける操作)は、動いている心臓上で直径約2mmの血管同士をつなぎ合わせるという、非常に難易度の高い手術。さらに、心臓背側面へのアクセスは特に難しく、内視鏡および器具の挿入角度や作業範囲は、肋骨などにより著しい制限を強いられる。これらの制限下でも内視鏡下手術をより迅速かつ的確に行うことを目的に、オリンパスは、物を把持する指に相当するグリッパーに加え、人間の肩・ひじ・手首に相当する7自由度を有したマニピュレーターと、それを制御する「胸部外科用インテリジェント手術支援ロボット」技術を開発した。ひじに相当する関節を用いて、障害物を避けながら対象部位へのアクセスと、操作が可能になる。

 近年、我が国において、心筋梗塞や狭心症をはじめとする心臓の疾患は、がんに次ぎ、死因の第2位を占めている。冠動脈バイパス術に代表される胸部外科領域の手術は、一般的に胸を大きく切開するため、手術が行いやすい一方で胸に大きな傷が残ることや、長期の入院期間を要することが懸念される。さらに、患者の高齢化に伴い、患者にとってより負担の少ない治療技術の確立が、重要かつ緊急課題となっている。

 そこで有効な手法のひとつが、低侵襲治療を実現する内視鏡下手術。内視鏡下手術は、体表面に数個所の小さな穴を開け、術者の「目」となる内視鏡や「手」となる専用器具を体内へ挿入し、内視鏡から映し出される映像を見ながら手術を行う。大きな切開をしないことは、傷が小さく術後の痛みも少ないため、早期回復を可能にするという利点がある一方で、術者にとっては器具の操作に高い技術を必要とするため、未だ限定的な適用にとどまっている。

 これを受け、NEDOでは平成20年度より、インテリジェント手術機器の基盤技術の確立およびそれらの技術を融合した革新的医療機器の実用化を目指す「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発(旧名:インテリジェント手術機器研究開発)プロジェクトに取り組み、その中で東京大学とオリンパスは、「胸部外科用インテリジェント手術支援ロボット」技術の開発を実施してきた。