JFEスチールは、ステンレス鋼製造のためのクロム鉱石溶融還元炉(以下、溶融還元炉)で使用するバーナー加熱添加装置を開発・設置した。クロム鉱石を純酸素バーナーの高温火炎で加熱しながら炉内に添加することで、エネルギー効率が向上し、環境負荷低減に寄与する。同社の東日本製鉄所製鋼工場に設置した。
ステンレス鋼製造には、フェロクロム(FeCr)合金の使用が一般的だが、フェロクロムはレアメタルとして国家備蓄物資に指定されている。同社の溶融還元炉は、レアメタルではないクロム鉱石(Cr2O3)をスラグ内で溶融し、炭材(コークス、石炭)で還元して、ステンレス鋼の原料である金属クロム(Cr)を回収する独自技術を有する設備。クロム鉱石を使用することで、フェロクロム合金の使用量の削減および原料選択の自由度向上に寄与している。
今回開発したバーナー加熱添加装置は、従来のクロム鉱石供給装置(クロム鉱石添加ランス)に炭化水素ガスを燃料とする純酸素バーナー機能を付与し、約2800度の高温火炎を介してクロム鉱石を炉内に添加する。これにより、火炎中でクロム鉱石粒子が高速で加熱されるため、クロム鉱石の還元に必要な熱を従来よりも高効率で与えることが可能になる。
同装置の導入により、従来の添加方法と比較してエネルギー効率が約20%向上、同一の熱供給量における金属クロムの回収量が20%増加し、フェロクロム(FeCr)合金の使用量の削減につながる。また、熱源としての炭材の低減にともなう二酸化炭素ガス排出量の削減による環境負荷低減が可能になった。