今回開発した重希土類元素を含まない高性能焼結磁石(Sm-Fe-N系) 高性能焼結磁石を2段重ねにしたものに、鉄球30個が磁着している 産業技術総合研究所は、重希土類元素であるジスプロシウム(Dy)を含まない等方性サマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)系磁石粉末を90%以上の高い相対密度で焼結する技術を開発した。
Sm-Fe-N系磁石粉末は、ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)系磁石に次ぐ高い磁石特性をもつ材料で、Dyを使用しない高性能磁石材料として期待されている。しかし、焼結性が悪いために磁石粉末を樹脂などで固めたボンド磁石だけが製品化されている。
今回、等方性Sm-Fe-N系磁石の粉末をサーボプレスによる荷重制御とパルス電流を流して焼結するパルス通電焼結法を組み合わせて焼結することによって、400℃以下の焼結温度で相対密度90%以上の緻密な焼結体を作製することができた。磁石の性能の指標である最大エネルギー積は129 kJ/m3(16.2 MGOe)と、等方性の磁石としては最高レベルであった。この高性能等方性磁石は樹脂を使用しない焼結体であり、Nd-Fe-B系磁石より耐熱性や耐酸化性に優れていることから、高温・多湿の環境下での使用も期待される。
今後は、異方性のSm-Fe-N系磁石粉末を用いて異方性焼結磁石を開発するとともに、焼結技術だけではなく、磁石粉末自体の研究開発を行い、さらに高性能なSm-Fe-N磁石の開発を目指す。