IHI( http://www.ihi.co.jp )はこのほど、米ボーイング社と航空機電源用の再生型燃料電池システムに関する共同研究を行う契約を締結した。再生型燃料電池は、充電可能な燃料電池であり、エンジンとは独立して電気を供給することが出来る。これにより、航空機の電力システムの負荷低減及び重量削減が図られ、また副産物は水のみであるため、省エネルギー化、二酸化炭素排出削減を可能とし、航空機の環境負荷を低減することができる。
現在、航空機に必要な電力は、主にジェットエンジン駆動の発電機により発電されている。ジェットエンジンは、燃料を使用して航空機が要求する水準の推進力と電力をつくり出している。発電能力はジェットエンジン出力に比例するため、出力の低い地上移動時や降下中には電力が不足気味であり、一方で高度上昇中や巡航中は余裕がある。再生型燃料電池は、発電機による発電能力の余裕分を活用して水を電気分解して水素と酸素を生成・保存し、電力が不足する時に蓄えていた水素・酸素を使って発電する。再生型燃料電池を組み込んで航空機電力システムを最適化すれば、発電機による発電量低減や電力システムの小型軽量化が可能となり、燃料消費量を削減できる。
今後、再生型燃料電池システムのプロトタイプを試作し、2010~2011年に地上での技術実証試験を行う。2013年までには、ギャレー(旅客機用厨房設備)などに電力を供給する補助電源として実際の航空機に搭載し、実証試験を行っていく。
IHIは、ジェットエンジンでは国内最大のシェアを有し、航空機装備品メーカーとしての経験は豊富。また、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と地上発電用燃料電池の研究開発をした経験があり、子会社であるIHIエアロスペースはJAXA(宇宙航空研究開発機構)と成層圏プラットフォーム飛行船プロジェクトの電源系開発の一環として再生型燃料電池の研究を進めてきており、燃料電池に関する経験も豊富。
今後、ボーイング社と共同で航空機に搭載可能な燃料電池技術の研究を進めていき、環境負荷を低減する航空機の実現に貢献していくという。なお、この研究は、経済産業省が公募した「航空機用先進システム基盤技術開発(航空機システム革新技術開発)」で採択されたプログラムも活用しながら進めていく。