日本精工( http://www.jp.nsk.com )は、高い信頼性と早い応答性、小型・軽量化を実現したボールねじを開発、世界で初めて*二輪車のブレーキ・バイ・ワイヤシステムに採用された。
熟練者でも難しいとされる、二輪車の大型スーパースポーツモデルのブレーキ操作を安心して行えるように、前・後輪連動ブレーキシステムとABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の双方を電子制御化し、より緻密にコントロールする装置の採用が広がっている。このブレーキシステムは、最適な制動力をECU(エレクトロリック・コントロール・ユニット)が検知・演算し、前輪側と後輪側、それぞれのブレーキユニット内に配置されたモータの回転で油圧を発生させるブレーキ・バイ・ワイヤシステム。今回、NSKが開発した「ブレーキシステム用ボールねじ」は、モータの回転を直線運動に変換し、ねじ軸でピストンを押して油圧を発生させる機構に採用された。本製品の特長は以下のとおり。
(1)高い信頼性が求められるブレーキシステム向けには採用が難しいとされていたボールねじを開発。ボールがねじ回路以外に入り込みボールねじがロックし、ブレーキ非作動を防ぐため、使用しないねじ回路の溝を浅くする構造を開発した。また、コマ*の材質は従来の樹脂製に代わり、信頼性が高い金属製とした。実用化にあたっては、多くのシミュレーションおよび耐久試験により、その信頼性を実証している。
*コマ:ボールを元の回路に戻すための循環部品の一種
(2)二輪車の大型スーパースポーツモデルのブレーキシステムには、走行性能を高めるため小型・軽量化が求められるため、本開発品は小型化が可能なコマ式ボールねじを採用、コマ固定部品を廃止することで、さらに小型化した。また、ねじ軸で直接ピストンを押す構造を開発し、ピストンを押すプッシュロッドを廃止した。これらにより、二輪車のCVTに採用されているボールねじに比べ、約70%軽量化している。
(3)小型・軽量化による慣性の大幅な低減に加えて、ボールねじの低フリクション性能により、二輪車のスーパースポーツモデルに求められる早い応答性を実現している。
二輪車・自動車で安全性、快適性、環境性能の向上のため、今後ますます電動化や小型・軽量化が進むなか、NSKでは、ブレーキの小型・軽量化や電動化のニーズに対応するボールねじの開発を進めており、この分野で2012年に15億円の売上を目指す。