第04回 直噴ガソリンエンジン

第04回 直噴ガソリンエンジン kat 2008年8月16日(土曜日)

 日米欧で強化される燃費規制に対し、独フォルクスワーゲンやトヨタ自動車、マツダなど、直噴ガソリンエンジンの実用化が進んでいる。この方式は希薄な混合気でも安定して燃焼させることができ、軽負荷域でもスロットルを絞る必要がなくポンピングロスの低減、また成層燃焼時はシリンダ壁面のガス温度が低く冷却損失が少ないことで熱効率も向上できる。

 トヨタ・レクサスに搭載されたD-4Sエンジンの筒内噴射方式を見ると、ピストン上昇中に、ピストンの頂部に設けたハート形のくぼみ(キャビティー)に向かってインジェクタ(図中5番、電磁式燃料噴射弁)が高圧の噴霧燃料を噴射し、キャビティー形状をガイドとして点火プラグに成層混合気を導く(ウォールガイド方式)。こうすると点火プラグ周囲には局部的に高濃度の混合気が形成されるため、確実に点火、爆発させることができる。

 高圧燃料噴射ポンプは燃圧を4?13MPa程度に昇圧し各インジェクタに分配する。インジェクタはECUからの噴射信号によって必要な量の燃料を筒内に噴射する。

 インジェクタの仕組みは、コイルに電流を流すと発生した磁力によりコア(可動鉄芯)が吸引され、コアと一体になったニードルバルブが流量特性に基づくストローク分だけ開弁するというもの。直噴用インジェクタは、吸気管噴射に比べ噴射可能時間が短いためニードルバルブのより速い応答性(つまりストロークの高いレスポンス)が要求される。筒内の爆発圧力やエンジンとのシール仕様、高燃圧に耐える構造であるのはもちろんである。一方、開弁、噴射のタイミングなどをきめ細かく制御できるよう、噴射のメカ部分であるインジェクタのニードル部分の可動部分のすき間はサブミクロンレベルで仕上げられている。そのため、潤滑がよくないと焼付きが発生し、燃料噴射が正常に行われない。そこで、潤滑性を補うため燃料であるガソリンに摩擦調整剤を添加しているが、さらにニードルの可動部分にDLCを施して自己潤滑性を付与するなどの手法も検討されている。

 また、燃料の筒内噴射はエンジンオイルの潤滑を阻害し、特にピストンリングのトップリング部の摩擦が問題となるが、ガソリンとともに噴霧された摩擦調整剤がリング部の摩擦を低減するという効果も報告されている。また、摩擦調整剤添加ガソリンを一定期間使用した後では、エンジンオイル内に摩擦調整剤が蓄積され、動弁系摩擦を低減する効果も現れると考えられている。

※成層燃焼:通常、ガソリンエンジンではスロットルバルブより空気を吸入、インテークマニホールドで吸入した空気にインジェクタにより微粒化したガソリンを吹きつけ混合。11?17:1程度の混合気(空気重量:ガソリン重量の比)をインテークポートよりシリンダ内に吸入し、圧縮後点火?燃焼?排気させる。ガソリンと空気を混合する際、吸入した空気全てに均一にガソリンを混合する場合を均一混合と言い一般的に広く用いられている。一方、成層燃焼ではピストン下降に伴うシリンダ内の気流などを利用してガソリンと空気が均一に交じり合うことを防ぎ、混合気の濃い層(可燃層)とほとんど空気だけの層に分け、可燃層が圧縮行程後期にスパークプラグ近傍に集まるようシリンダ内気流を制御する。これによって、シリンダ内全体の混合比で見ると、最大55:1(EGR含む)程度の超希薄燃焼を可能としている。