第03回 東京ビッグサイトで、エスカレータ急停止事故
第03回 東京ビッグサイトで、エスカレータ急停止事故東京・有明の東京ビッグサイトの上りエスカレータが急停止後に逆走し、10人が軽傷を負った事故で、エスカレータに乗っていた人の総重量が、荷重制限の約7.5tだけでなく、逆走防止用のブレーキ能力の限界である約9.3tも超えていた疑いの強いことが分かった。このため、自動停止後にずり落ちるように逆走したと見られている。
問題のエスカレータの構造は明らかにされていないが、一般にエスカレータはモータ+チェーンで駆動する。踏み板の両端に取り付けたタイヤ(回転体)がエスカレータ両端の案内レールの上を転がることで、滑らかに上下動する。ただし正常に動くかどうかは、積載荷重による。
製造元の日本オーチス・エレベータによると、事故時は荷重オーバーに伴い、電源が切れて自動停止したと同時に、下り方向に逆走するのを防ぐためディスクブレーキが作動したと見られる。しかし、ブレーキ能力の限界は1ステップ(横102cm、縦40cm)あたり120kgで、総重量では約9.3t。問題のエスカレータはステップが84段あり、階段状になっているのは上下部分の3段ずつを除く78段。建築基準法上の安全基準の計算式は、1ステップあたりの荷重制限130kg×78段×0.74の7,503kgで、これは2ステップに大人3人が乗る計算だが、事故当時は1ステップに3~4人が乗っており、重みを支えきれずに逆走した疑いが強いという。
先に紹介した構造から推察すると、上に向かい転がるはずのタイヤが、下に向かい滑らかに転がったことになる。いかに信頼性の高い機械であっても、設計値をはるかに超える条件では安全な稼働は望めない。はやって会場を移動する。イベントの性質からも事態は予想されたことだろう。エスカレータは人々の利便性を図り、また今後の高齢化社会ではますます普及していくであろう大量輸送機器である。事故原因の一層の解明と、関係者による利用上の安全管理の徹底を強く望む。