第143回 2011国際洗浄産業展がまもなく開催、製品表面の機能性を高める洗浄技術
第143回 2011国際洗浄産業展がまもなく開催、製品表面の機能性を高める洗浄技術日本産業洗浄協議会( http://www.jicc.org/ )などは8月31日~9月2日、東京・有明の東京ビッグサイトで「2011地球環境保護 国際洗浄産業展」を開催する。
産業洗浄は、各種機械部品の品質を保つのに不可欠なプロセス技術で、製品や部品の機能性や性能の向上、製品の外観の向上、品質や信頼性の向上、製品の次工程への橋渡しなどを目的に行われる。ハードディスクドライブや半導体などの微細機構においてはナノ・マイクロコンタミネーションを除去しクリーン環境を保持することで、長期間にわたり高性能化を実現する。
産業洗浄の対象として大きな部分を占める金属部品の洗浄では、加工油剤など油脂類の除去を目的とする洗浄が最も多く実施されている。これは多くの工業製品が切削加工や塑性加工によって生産され、そこで使われた加工油剤や固体潤滑剤・化成膜に加えて、切削くずなどが製品表面に付着しているためだ。工業製品の多くはそうした加工後に熱処理やコーティングなどの各種表面改質が施されるが、いかに高精度な表面改質でも汚れの付着した表面に施したのでは、不具合が生じる。表面改質による機能性の良否は、前処理としての洗浄技術にかかってくるわけだ。
ここで、汚れを加工油剤に絞っても水溶性加工液に適した水系洗浄剤(アルカリ・中性・酸性)、鉱油系加工油に適した炭化水素系洗浄剤や塩素系洗浄剤などがあり、水系洗浄剤では排水処理が必要、炭化水素系洗浄剤では引火点があるため防爆対応が必要、塩素系洗浄剤では環境への配慮や人体への影響などから洗浄装置の密閉化構造が必要など、汚れの種類や持ち込み量、それに伴い選定した洗浄剤などによって適切な洗浄装置・システムを選ばなくてはならない。たとえば複雑形状の部品を大量にバッチ処理で洗浄するには、強力なキャビテーションや振動を発生させ超音波洗浄が適しているといえよう。
2011国際洗浄産業展では、最新の洗浄剤や洗浄機・システムから、溶剤や廃液などの回収装置、水処理や油水分離などの周辺機器などが多数出展されるほか、環境にやさしい適切な化学物質を選定し揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制を支援するため、日本産業洗浄協議会で長年構築してきた「経済的に実行可能な最良利用可能技術(EVABAT)」なども紹介される予定だ。ぜひ会場に足を運んで、最新の洗浄関連製品・技術に触れるとともに、各種洗浄技術のエキスパートと意見交換していただき、適切な洗浄処理という適切な前処理によって、表面改質の機能を最適化し、表面の機能性を向上させ、ひいては各種工業製品の付加価値向上につなげていただきたい。