第141回 モーション・エンジニアリング展が開催:新産業を支えるベアリング技術
第141回 モーション・エンジニアリング展が開催:新産業を支えるベアリング技術「第20回モーション・エンジニアリング展」が7月20日~22日、東京・有明の東京ビッグサイトで開催、モーション・メカニズム、機械要素技術、アクチュエータシステムなど駆動・伝達・制御に関する製品技術が多数展示された。
NTNがメインテーマに掲げた「次の産業を支える技術」のとおり、同社をはじめベアリング各社で、新しい産業を支えるベアリング技術を紹介した。
「次の産業」としてNTNでは、インホイールモーターシステムをはじめ、電気自動車(EV)システム関連商品を前面に押し出した。そのうちEVモーター用ベアリングでは、バッテリー寿命延長のための「低トルク密封深溝玉軸受」を紹介した。グリースを掻き取り転走面への流入を防いで攪拌抵抗を低減する低トルク保持器や、低粘度で耐熱性に優れる基油と増ちょう剤の量を低減した低トルクグリースの採用で、回転トルクを従来比で50%低減した。またEVをはじめ高い制御性を必要とする軸受・システムでは、センサー付きとして稼働状況を確認しフィードバックをかけるほか、数十点という多数のベアリングが稼働する複写機など事務機器では不具合箇所を早期に特定できることを強調する。転がりからすべりに変えて軸受コストを抑えつつセンサー付き(写真は回転センサー付き樹脂製すべり軸受)とすることも推奨していた。
ジェイテクトでは「グリーンテクノロジー」をテーマに、たとえば風力発電機用ベアリングを展示した。ジェネレータ(発電機)用「絶縁セラミック軸受」は、転動体にセラミックス(窒化ケイ素)を使用することで電食(回転中の軸受内部に電流が通過して転がり接触部の表面が局部的に溶融する現象)を防止するとともに、軸受内部の発熱を抑制し、軸受に封入されたグリースの長寿命化を実現する。同社では「発電機や増速機が収納されるナセルが高度80m以上という高所にあり、メンテナンスの難しい状況でロングメンテナンス化を図るときに、セラミック溶射被膜を施した軸受では被膜が減摩することで絶縁機能が失われる。絶縁機能が失われることのないセラミックボールの信頼性をアピールして、採用拡大につなげたい」としている。
日本精工では省スペース、低騒音、低発塵、洗える!防水など過酷な環境下で活躍するベアリングと精機製品を展示した。そのうち、半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)などますます微細化の進む分野での要求が厳しい低発塵化に対応するベアリングとして、宇宙機器で使われているMAC(シクロペンタン)油をベースにした、超低蒸気圧の炭化水素系オイルとフレーク状PTFEパウダーである吸着物質からなる薄膜潤滑技術「E-DFO」を施したベアリングを展示した。潤滑皮膜の保持性を向上することによりV-DFO潤滑皮膜(従来の固体潤滑皮膜に比べ10倍以上の長寿命化、フッ素系グリースと比較して1/10の低発塵・低アウトガスを実現した、フッ素油焼付け膜)と比較しても、さらに数倍以上の耐久性を有するとともに、真空環境の汚染も半分以下に抑えることができる。たとえば半導体・FPD製造プロセスや太陽電池製造プロセスで活躍する各種真空成膜装置のベアリングとして、高い潤滑性を実現しつつ、超クリーン環境を保つという。
23日に明らかになった東日本大震災からの「復興基本方針」の原案では、太陽光発電や風力発電などの導入促進などのエネルギー政策が打ち出されている。「産業の米」といわれるベアリングは、グリーンエネルギーなどそうした新しい産業においても、センサー付きとして知能化を図るなど進化を遂げながら、今後も重要な機械要素として位置づけられていくだろう。