第136回 食の安全を守る材料・表面改質・機械要素技術

第136回 食の安全を守る材料・表面改質・機械要素技術 コダマ 2011年6月13日(月曜日)

FOOMA JAPAN 2011(国際食品工業展) 日本食品機械工業会は6月7日~10日、東京・有明の東京ビッグサイトで「FOOMA JAPAN 2011(国際食品工業展)を開催した。

 同展は、食品機械・装置および関連機器に関する技術・情報の交流と普及や、食品産業の一層の発展に寄与すべく、「食の安全・安心」に関わる食品機械の最先端テクノロジー、製品、サービスを通して、「食の技術が拓く、ゆたかな未来」を提案する目的で開催されるもの。今回は「つくります! 美味しい未来」をテーマに645社/2783小間の規模で、圧搾機や攪拌機、乾燥機、混合機などの原料処理装置から、製パン・菓子装置や食肉・水産物加工機、飲料製造装置など食品製造・加工装置・ライン、エンジニアリング・生産流通システム、鮮度管理・品質保持装置、包装・充填、保管・搬送、計測・分析・検査、衛生対策・管理、環境対策・リサイクル、設備機器・技術・部品などの最新技術・製品が出展された。

 このうち設備機器・技術・部品としては、食品機械の耐久性など機械的特性や省エネ性能などを向上しつつ、衛生安全性を向上する製品技術が展示された。

 潤滑剤関連では、偶発的に食品と接触することが許容される「NSF H1規格認証品であり、機械部品の寿命向上や効率改善に役立つ食品工場用潤滑油剤が展示された。エクソンモービルでは、コカコーラ社の採用担当者の談話のVTRなどを流しながら、同社ペットボトル飲料のキャップを閉めるスクリュー圧縮機に採用されているNSF H1登録の食品機械用高性能合成潤滑油「モービル SHC シーバス シリーズ」などを紹介した。耐摩耗性、長期間にわたる酸化安定性、錆止め性、腐食防止性に優れるほか、高性能基油と独自添加剤の配合により内部摩擦抵抗を低減し潤滑時の油温上昇を防ぎ省エネも実現するという。日清オイリオグループでは、植物由来の食用油脂と食品添加物だけという食品に使える素材だけを使うことでNSF H1、3H(焦げ付きを防ぐために使われる植物油など、直接食品に接触する目的で使用される離型油)の認証を取得した安全性の高い食品機械用潤滑油「エステローラF」を紹介した。食用油の持つエステル基により潤滑性を確保した上、酸化安定性を高め作動油としても長時間の稼動を実現しているという。藤本油化では100%合成油とスルフォン酸カルシウムベースの米Lubriplate製グリースを展示、製パン機などに適用できる滴点371℃以上という高温安定性のほか、耐摩耗性や極圧性など高い機械的特性を示した。

 また、軸受関連では大同メタル工業が金属母材中に固体潤滑剤を微細で均一に分散させたことで無潤滑で-200の極低温から700℃の高温まで使用できる高性能無給油軸受「サーマロイ」を紹介した。水中のほか、オーブンなどの高温での摺動箇所にも適用できる。また、三旺は中国製の錆に強いステンレス製ベアリングなどを紹介した。

 水のかかる環境下で使われることの多い食品機械では、このようにステンレス製の部品が多用される。たとえば攪拌機のシャフトやプロペラにはオーステナイト系ステンレスが使われるが、耐食性に優れ高靱性だが、耐摩耗性が低く、また表面に高い荷重や衝撃が加わった箇所ではソースやマヨネーズなど酸性物質による孔食が進みやすい。これに対しボディコート・ジャパンでは、オーステナイト系ステンレス鋼専用の表面硬化処理「コールスタライジング」によって耐摩耗性、表面硬度、耐食性を向上させるほか、高負荷で衝撃された際の素材の塑性変形に追従するよう弾力性も付与されるという。

 食の安全への意識が高まる中、食品機械の機械的特性を高めつつ、衛生安全を確保する材料・表面改質・機械要素技術がますます求められてきている。