第112回 JIMTOF2010に見る工作機械のトレンドに対応する軸受・直動案内技術
第112回 JIMTOF2010に見る工作機械のトレンドに対応する軸受・直動案内技術in
10月28日~11月2日、東京・有明の東京ビッグサイトで「第25回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2010)」が開催、切削・研削・研磨・プレス加工などの工作機械をはじめ、直動案内機器や軸受などの工作機器、工具、切削・研削油剤などの関連技術が一堂に会した。LEDなどグリーンエネルギーに関わる微細加工の技術が紹介される一方で、ここ数年で大幅な需要拡大が見込まれる航空機や中国など新興国が市場を牽引する建設機械など大型部品の加工技術もデモンストレーションなどをまじえて紹介された。こうした各種ニーズに対応する多軸機や複合機の可動部を支える軸受や直動案内などの機械要素技術も多数出展された。
航空機部品など難削材加工にセンサ付きスピンドル
今回ヤマザキマザックやオークマ、森精機製作所など多くのブースで、大型加工機によるランディングギヤなど航空機部品のデモが行われていたが、航空機では機体重量を軽減し燃費を向上させるためCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やCFRPと相性が良いチタン合金など難削材による複雑形状の部品が多い。そこで旋削機能も含めた高剛性・高精度な5軸複合加工機が必要となる。5軸複合加工機1台に工程集約することで、工程間の搬送や段取り時間の削減、加工精度のバラツキを抑え、航空機部品の生産性向上が図られている。こうした多軸複合機での主軸の異常によるダウンタイムの低減などを目的に、日本精工では「荷重変位センサ付ビルトインモータスピンドル」を開発、披露した。2万rpmまでの回転域でアキシャル変位±1μmの高精度検出と0.012秒(6,000rpm時)の高応答検出が可能な荷重変位検出用センサをスピンドル軸受部に取り付けることで、切削加工中の荷重を常に検知、工具の寿命管理やスピンドル異常検知などを可能にする。
精密・微細加工に対応する各種機械要素技術
医療・光学分野向けなどの切削による精密・微細加工では、工具主軸の超高速回転と振れ精度や、送り機構の超高精密、高剛性などが求められる。こうしたニーズに対して、たとえばジェイテクトではセラミックボールの転がる軌道輪の設計や軽量・高強度の特殊樹脂製保持器の設計、外輪給油穴の設計などを最適化することで、オイルエア潤滑で従来軸受より20%高速化(dmn値400万)、さらに精度に関わる温度上昇をオイルエア潤滑で同40%低減する「超高速アンギュラ玉軸受」を開発、出展した。NTNでもまた、主軸用軸受として、内輪にセラミックスを使い、低温の潤滑油を常に送り出し昇温を抑えつつ35,000rpmの超高速回転を実現する「エアオイル潤滑超高速NU形円筒ころ軸受」を開発した。一方THKでは、従来直動案内の2倍となる8条列の転動溝などにより、ウェービングを上下10nm以下、左右20nm程度と一般的な直動案内の1/10に抑えつつ高い剛性を実現したボールリテーナ入りLMガイド「SPR/SPSシリーズ」を展示した。
新興国向けの機種には部品にもコストパフォーマンスが求められる
こうした用途での高剛性とは別に、自動車や家電製品など需要が堅調な中国など新興国では、加工の時短要求とともに工作機械の使い方が荒いと言われる。タフでコストパフォーマンスの高い仕様としては、たとえばスライドユニット長さを長くし組み込まれるローラの数を増やすことで精度を向上しつつ、小形サイズながら負荷容量と剛性を上げ、工作機械のトータルコストダウンを実現する日本トムソンの「超高精度・超高剛性ロングユニットMXL」などがあろう。また、異物粉ガ発生しやすい生産現場で稼働する直動案内で異物侵入による軌道面の異常摩耗や展胴体の循環不良による破損を防ぐ日本精工の「高防塵サイドシール付きローラガイド」なども、直動案内の潤滑寿命を延長し工作機械の長時間稼働を実現するタフな技術と言えようか。
JIMTOFの会場で某工作機械メーカーが、「(これまでの自動車分野の偏重から)航空機、医療など成長分野をはじめどんな分野の加工にでもチャレンジしていかなくてはしなくてはいけない。多軸・複合機によってこれまで思いもよらなかった分野まで加工対象が拡がってきている」と語っていた。軸受・直動案内など機械要素技術の活躍によって、微細・精密な加工機から、大型部品の加工機、新興国などでの荒い使用に耐える低コストの加工機に至るまで多様な加工ニーズに対応して進化し続ける工作機械の高性能化と信頼性向上が支えられている。