第99回 HEV・EVの普及拡大で求められるメカニカル試験評価
第99回 HEV・EVの普及拡大で求められるメカニカル試験評価富士経済では先ごろ、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)の3種を「エコカー」と定義、2009年のエコカー世界市場が前年比44.2%増の76.3万台となったのに対し、2010年は100万台突破、2015年には500万台超え、2020年には1,800万台超えとなる予測を発表した(「2010版HEV,EV関連市場徹底分析調査」)。
内燃機関からHEV、EVなどに至る自動車技術のパラダイムシフトに対応して、新しいパワートレインのための試験評価技術が近年、注目されてきている。こうしたニーズをとらえ英国UKIP Media & Events社では本年、インド、ドイツ、中国、米国で4回にわたり、自動車の各機性能試験評価機器の総合展「Automotive Testing Expo」を開催する。
さて、従来の内燃機関が600~8,000rpmの領域で回しているのに対し、HEVやEVのモータ・ジェネレータでは始動の0rpm~20,000rpmまでの幅広い回転領域で、正確に、より省エネに回さなくてはならない。また、モータ・ジェネレータでは小型・軽量化しつつ高速回転させて馬力を稼ぐ発想となるため、内燃機関に比べはるかに高い減速比となり、歯車には極めて過酷な条件となる。
それらHEV・EV特有のニーズに対応した試験評価機器の開発も本格化してきている。たとえばスペースクリエイション(http://www.spacecreation.co.jp)では、青木邦章社長がヤマハ発動機で舶用ディーゼルエンジンの開発・設計に長年携わった経験から、自動車分野を主に各種開発試験機を開発しているが、近年ではHEVやEV、メカニカル・ロス低減といった自動車のニーズに対応した試験評価装置の開発を進めている。
先述のHEV・EV用モータの運転ニーズに対応して、モータ・ジェネレータ用高速モータリング装置(MED-10)を開発、販売を始めた。モータ・ジェネレータを0rpm始動から25,000rpmという高速で力行/回生運転するほか、連続定回転運転、パターン運転、急加減速運転などに任意に対応、正確に、より省エネに回すという実機に近い評価試験を可能にしている。
また、HEV・EV用モータではエンジンに比べはるかに高い減速比となり歯車にとって過酷な条件となると述べたが、実機に近い環境で高減速比の歯車を評価する動力循環型モータリング装置(MRP-20)を開発した。独自開発の油圧サーボアクチュエータによりねじり荷重を発生させ、運転中でも荷重負荷を任意に変更でき、変動荷重負荷を与えることもできる。
これら新しいパワートレインに対応する試験装置はすでに国内自動車メーカーで適用が進んできているが、「中国など新興国を中心に海外自動車メーカーへのアプローチも始めている」(青木社長)という。中国などの現地企業の自動車では、排出ガス規制対応車両と謳ったものでも、生産技術が安定していないためか、規制値をクリアしていない車両も流通しているのが、現状。それでもHEV・EVの開発はすでに盛んで、ギヤの静音化など日本よりも厳しい要求も出てきている。
HEV、EVの信頼性を支え、それらの市場拡大を支える試験評価機器の開発は、グローバルで強く求められてきている。