第71回 省エネ、創エネシステム躍進に機械技術の飛躍を願う

第71回 省エネ、創エネシステム躍進に機械技術の飛躍を願う kat 2009年12月28日(月曜日)

フィルム太陽電池(提供:産業技術総合研究所)フィルム太陽電池(提供:産業技術総合研究所) 今年は家庭用を中心に省エネ、創エネのシステムが普及、拡大した。省エネといえば従来の照明に対し6~7割消費電力を節減できるというLED(発光ダイオード)照明の販売競争が活発化した。創エネというと、家庭用ヒートポンプ式給湯器や家庭用燃料電池、何より新買取制度で需要が急増している太陽光発電などであろうか。こうした新エネルギーシステムにおいてメカの活躍の場が大きいことは本欄で何度か触れた。

 LEDについては今後取り上げることになろうが、たとえば基板材料となるサファイアは難削材のため、ダイヤモンド粒子を表面に固定したピアノ線ワイヤーで切断する。従来の研削液を使ってワイヤーで切断する方法に比べ3~5倍加工能率が高いという。

 ヒートポンプは本欄第47回で触れたとおり、熱交換器に大気中の熱を取り込み、地球温暖化係数が極めて低い冷媒のCO2を膨張させて大気中の熱を吸収、その熱をコンプレッサーで圧縮してさらに高温にし、高温になった熱をタンクユニットの水に伝えてお湯にする。CO2は高圧側で10MPa以上と動作圧力が高く、フロン冷媒と異なり摺動面に塩化物やフッ化物などの冷媒による固体潤滑膜を形成しないため、圧縮機内部の摺動部では摩耗量の増加が懸念される。あるロータリー圧縮機では、負荷される荷重が大きく接触応力が高くなるベーン先端とローリングピストン外周部の摩耗量増加をする抑制するため、ベーンに対し優れた摺動特性を持つDLC-Si(シリコンを含有させたダイヤモンドライクカーボン)が適用されている。

 太陽光発電ではやはりシリコンウェハーを薄く切断するのにダイヤモンド砥粒付きワイヤーソーが使われ加工能率を高めているほか、第17回で紹介したような積極的に太陽光を追いかけ発電効率を高める太陽光追尾式発電システムでは、対応の動きに合わせてモーターを駆動、精密減速機でパネルの角度を調整し、常にパネルに光を集める。さらに軽量で設置の自由度が高いフレキシブルなフィルム太陽電池として印刷技術を使った塗布変換型有機対応電池(三菱化学)のほか、耐久性(耐摩耗性)に優れつつ、シリコンと同様の半導体特性を持つ炭素系材料、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)を表面に被覆したフィルム太陽電池などの開発も進んできている。この量産においては、第62回で紹介した、ロール・ツー・ロールでフィルムなどの柔軟・長尺媒体「ウェブ」を搬送し、途中処理工程を経て最終的に巻き取るウェブハンドリング技術も、安価に信頼性の高いシステムとして開発が進められていくであろう。

 この太陽電池は元来わが国が得意とする技術だったが国を挙げての取組みが先行したドイツに抜かれる形となった。しかし、市場が活発化した現在、従来のような太陽電池メーカーのみが争う市場ではなく、材料や表面改質、加工、ロール・ツー・ロールも含めた製造装置、評価装置など周辺技術を含めた市場の広がりを見せている。

 このように、省エネ・創エネ技術の進展とともに、活躍の場を広げている機械技術のさらなる発展に、来年も引き続き期待したい。