第41回~第50回

第41回~第50回 admin 2008年7月28日(月曜日)

第41回『ネゴシエーター』

第41回『ネゴシエーター』 kat 2009年5月18日(月曜日)

 籠城事件の際、人質をとった犯人と直接渡り合うネゴシエーター(交渉人)専門の刑事の活躍を描いたポリス・アクション。籠城事件解決においては百戦錬磨のサンフランシスコ市警の名物刑事ローパー(エディー・マーフィ)は、同僚の刑事を殺して宝石店に立てこもったコーダ(マイケル・ウィンコット)を激しいカーチェイスの後、逮捕した。だが報復に燃えるコーダは脱獄し、ローパーの恋人ロニー(カルメン・イジョゴ)を狙う。

 コーダという男はかなり冷酷でタフな犯罪者である。4WDでのカーチェイスの後、路面電車に立てこもってのチェイスである。何とかかんとかつかまりはしたものの、ローバーへの復讐のため脱獄を企てる。その方法は、クリーニングに出す衣類を運び出すコンベヤである。回転寿司を運ぶような循環式のコンベヤ上のハンガーに衣類を下げる。ベルト駆動かチェーン駆動により、ハンガーをかけたブロックが一つずつ進んでいく。つまり、ぶら下がった衣類が押し合いへし合い進んでいく。コーダは、その衣類にまぎれてハンガーにつかまり、衣類とともに、階下の部屋へと運び出されるのである。これで脱獄完了。

 ところで本作の原題は”METRO”。ネゴシエーターではないんだと思ったら、たしかにあまりネゴがうまくない。ネゴがうまくないから、ハード・アクションになるのである。大量のスクラップの山を築いていくカーチェイスの中でもその他でもメカの見どころは満載だが、犯人との頭脳戦はあまり期待できないのであしからず。

第42回『ニュー・シネマ・パラダイス』

第42回『ニュー・シネマ・パラダイス』 kat 2009年5月24日(日曜日)

 シチリアのジャンカルド村での少年時代、母マリア(アントネラ・アッティーリ)と妹の三人暮らしだったサルヴァトーレ(サルヴァトーレ・カシオ)はトトと呼ばれ、買物の金で映画を観るほどの映画好きだった。映画館パラダイス座の映写室に出入りし映写技師のアルフレード(フィリップ・ノワレ)との友情を育むトト。しかしある日、アルフレードが映画館に入れなかった人のために広場の白壁に同時映写している最中、フィルムが激しく燃え出しパラダイス座を全焼、トトの懸命の救出にもかかわらず、アルフレードは火傷が原因で失明してしまう。

 さて、映画のフィルムは1秒に24コマ動き何百倍にも拡大して映写される。画面が変わったときフィルムに1mmでもずれがあると何十cmにも拡大されて映写されるため、すばやく正確にフィルムを動かす仕組みが必要になる。シャッターが開いているときフィルムは止まり、シャッターが閉じている瞬間にフィルムを移動させるため間欠輪動装置というメカが働いている。

 当時のフィルムは可燃性で、こうした高速回転稼動に伴い高温になり、火災を引き起こすことも少なくなかったという。発火したフィルムから上下のリールに巻かれたフィルム全体に飛び火するのを防ぐため、防火トラップが装備され、レバーを操作するとフィルムを切断して最悪の事態を防ぐ仕掛けになっていたようである。

 火災にならなくともフィルムが擦れて切れることもままあり、アセトンで切れたフィルムの両端を溶かして接合する場面もあった。意図的にフィルムを切断することもある。検閲の入ったキスシーンである。

 コレクションされた数十作にも及ぶ美女たちのキスシーン。もちろんメカよりもこちらのほうがはるかに叙情的なことは、言うまでもない。

第43回『レディ・キラーズ』

第43回『レディ・キラーズ』 kat 2009年6月1日(月曜日)


 ミシシッピ川のほとりの邸宅に暮らす敬虔なクリスチャン、マンソン夫人(イルマ・P・ホール)のもとに、大学教授と名乗るゴースウェイト・ヒギンソン・ドア(トム・ハンクス)なる紳士風の男が現れる。間借りを申し出たうえ、ルネッサンス後期音楽を練習したいとして地下室も借り受けるのだが、実は教授の狙いはミシシッピ川に浮かぶ船上カジノの地下金庫室。演奏仲間を装った4人の犯罪エキスパートがマンソン家の地下室からカジノに向け、ドリルやら火薬やらを使いトンネルを掘っていく。何やかやでカジノの売上金強奪に成功した彼らだが、マンソン夫人に計画を知られてしまい、教授は彼女の抹殺を企てる。

 ところが、マンソン夫人を殺そうとする仲間たちはいずれも愛すべき間抜けなキャラクターで、一人また一人と自滅していく。残った仲間の手で死体は葬られるのだが、これが何とミシシッピ川を定刻に通過するゴミ輸送船が使われる。橋げたを通過しようとする曳船(タグボート)の艀に積まれたゴミの上に、橋の上から死体をつき落とすのである。

 東京都でも不燃ゴミを船舶輸送しているが、輸送船は蒸気タービンなどによる動力船がゴミを積んだ艀を押して、あるいは曳いて航行する。押船方式は曳船方式に比べて動力が強く、一度に大量の輸送が可能で艀に人が乗船しない分、曳船より要らない。曳船の場合は、艀の後方に人が乗って舵を取ることなどもあって舵取りが押船に比べて正確で、川幅が狭い場所や川底が浅い場所での航行に有利という。ゴミの山の上に死体を見事に着地できるのも、お尻を振ることのない曳船の艀ならではと言えるかもしれない。艀で舵取りしている人の頭上に死体が着地してしまった場合は、その限りではないが…。

 2004年公開の本作は、1955年の作品『マダムと泥棒』をジョエル&イーサン・コーエン兄弟がリメイクしたブラック・コメディー。半世紀という時代背景、それぞれのテイストを見比べてみるのも一興かもしれない。

第44回『トパーズ』

第44回『トパーズ』 kat 2009年6月8日(月曜日)

 米ソ冷戦時代の1962年。ソ連諜報部(KGB)の高官クセノフが、CIA(アメリカ中央情報局)のノルドストロム(ジョン・フォーサイス)の協力を得てアメリカに亡命した。彼の証言からキューバに対しソ連がミサイルの搬入をしている事実が発覚するが、CIAは先のピッグス湾事件でキューバに対するコネをなくしていたため、ノルドストロムは友人のフランス情報部のアンドレ・デベロウ(フレデリック・スタフォード )にキューバ潜入を依頼する。キューバに赴いたアンドレは、愛人であるキューバ地下運動の美人指導者ファニタ(カリン・ドール)とその仲間たちの助けを借りて、ミサイル基地建築などの証拠を押さえていく。

 この諜報活動ではアルフレッド・ヒッチコック監督作品だけあって、秀逸なスパイ道具が活躍している。古きよき時代の作品だけにもちろん、本サイト編集のコダこだわりの銀塩で、しかも遠隔操作できる小型のスパイカメラである。そのカメラの回収では、ばらばらにして七面鳥の中に隠すという用心ぶり。取り出したマイクロフィルムは、タイプライターのリボン、キーの下、髭剃りと替刃に隠していると聞かされ、アンドレはキューバを出国する。実際にフィルムがどこに隠してあったかは、作品を鑑賞して確認していただきたい。

 ヒッチコック作品は、イングリッド・バーグマンやグレース・ケリーなど美人女優で固めるのが常だが、今回のマドンナ(寅さんのような表現だが)は地下組織の指導者を演じるカリン・ドールだろう。スリリングなプロットと美女、こだわりの道具はヒッチコック作品に欠かせない要素で、本コーナーがネタに困ったとき、ヒッチコック頼みになるゆえんである。

第45回『シッコ SiCKO』

第45回『シッコ SiCKO』 kat 2009年6月14日(日曜日)

 本サイトでも取り扱う医療機器の技術は米国が先行している。なのに…と問題提起するのは『華氏911』のマイケル・ムーア監督。国民皆保険は夢のまた夢という米国の医療制度、医療政策を、狂人や変人などを意味する「シッコ (sicko)!」と糾弾する。

 米国は国民健康保険というものがない。頼りになる民間の医療保険にも加入できない人が約5,000万人いて、加入者2億5,000万人も、既往症の申告漏れなどと難くせをつけて保険金の支払拒否がなされる始末。営利主義一辺倒の医療保険会社や製薬会社と、それら業界からの賄賂で政策を動かすブッシュ前大統領をはじめとする政治家らが築き上げた腐敗した米国の医療制度とは、医療を施さない(医者は申請否定率10%を維持するという)ことで儲かる仕組みになっている。

 20代前半の女性が乳がんにかかっても、若すぎるという理由で拒否、女性は医療費が無料のカナダに通院する。だが、米国ならペットでも受けられるMRIが、オタワでは1台しかないとか、米国なら即対応のバイパス手術が9?10週間待ちなど、カナダも決して楽園ではないことも描く。日本の医療システムはよっぽどマシだなと思いつつも、病院嫌いの方は観ないほうがお勧めである。ますます病院嫌いになること請け合いだ。

 なぜなら5,000万人の医療保険未加入者の悲惨なことといったら。ホイール・ソーを組み込んだソー・テーブルで木材をカットする作業中に中指と薬指を切断してしまった保険未加入の男は、手術の実費負担を迫られる。中指は6万ドル、薬指は1万2,000ドルという。苦渋の決断で薬指のみの接合手術を受ける。中指はごみ焼却場へ。彼が言う「いまや中指が消えるマジックができるんだよ」というジョークは、米国の医療制度への冷ややかな批判であろう。

 米国に倣って入社試験で自己管理をBMI(肥満度の判定方法、ボディ・マス・インデックス指数)で図ろうとする近年のわが国が、何かと理由をつけて保険加入を拒否する米国と同じ末路をたどらないことを祈るばかりである。

第46回『007カジノ・ロワイヤル』

第46回『007カジノ・ロワイヤル』 kat 2009年6月22日(月曜日)

 本作は、英国諜報部員ジェームズ・ボンドの活躍を描く人気シリーズ第21弾にして、イアン・フレミングのボンド・シリーズ第1作が原作である。

 殺しのライセンスを持つ00(ダブルオー)の地位に昇格し007のコードネームを得たジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)の最初の任務は、テロリストの資金を運用する男の正体を突き止めること。いくつかのテロを食い止めたボンドは、“死の商人”ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)に行き着く。高額掛金のポーカーで資金を稼ごうとするル・シッフルを阻止すべく、ボンドは掛金1,500万ドルの監視役として財務省から送り込まれた美女ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)とともに、モンテネグロの「カジノロワイヤル」に向かう。

 本作のボンドカー、マグネシウム合金、カーボン繊維複合物とアルミニウムのシャーシーで従来より30kg軽い「アストンマーチンDBS」は装備控えめで、ボンドカーに載った武器は、なんと医療機器だけである。毒入りマティーニを飲んでしまったボンドは、まず円筒形のシリンダーと可動式のピストンを持つシリンジで解毒剤を注入、心停止の瞬間を狙って自分でAED(自動体外式除細動器)をかける。AEDは心停止の際に自動的に解析し、必要に応じて電気的なショック(除細動)を与える機器である。街中で目にした方も多いだろう。

 これで何とか一命を取りとめるのだが、実はAEDを作動させたのは美女ヴェスパー。ボンドは解毒剤注入で意識を失っている。毒を飲まされたり、『24』のジャック・バウアーみたいに丸裸で拷問されたり、他国の大使館を爆破したりと、本作のボンドはとてもエレガントとはいえないが、まあ経験不足の悩み多きボンドも人間臭さがあって、一見の価値ありであろう。

第47回『あなただけ今晩は』

第47回『あなただけ今晩は』 kat 2009年6月28日(日曜日)

 本作は、『アパートの鍵貨します』のビリー・ワイルダー監督、ジャック・レモン、シャーリー・マクレーンのコンビによるおしゃれなラブ・コメディーである。

 パリ中央市場(レ・アール)そばの娼婦街に赴任してきた正義感の強い警官ネスター・パトゥー(ジャック・レモン)は、ストリートガールたちが仕事場にしているホテルをガサ入れするが、ホテルには上司の警部が客として居合わせ、ネスターはその場でクビになってしまう。ヒモたちがたまり場にするムスターシュ(ルー・ジャコビ)の店でやけ酒をあおるネスターは、イルマをこき使おうとするヒモをノックアウトし、そのままイルマ(シャーリー・マクレーン)のヒモとして一緒に暮らすことに。しかしイルマに客をとらせたくない恋するネスターは、変装してイギリス人の富豪X卿と名乗り、イルマに一晩話相手をさせるだけで500フランを払う。イルマが寝ている間に市場で働いて稼いだ金だ。

 さて、X卿に変装する場所は、ムスターシュの店の地下の酒蔵である。変装したネスターは、酒瓶が入ったケースを上げ下ろしするリフトで店の外の通りに現れる。リフトが上がると、普段はマンホールの蓋のような板が持ち上げられ観音開きになる。イルマと語らった後は、再びムスターシュの操作するリフトに乗って、地下へ。観音開きの板はリフトが下がるとともに閉じられて歩道になる。地下で着替えたネスターは、カウンターの隠し扉を通って地上のバーに戻り、イルマを出迎える。『アパートの鍵貨します』のバドと一緒で、何とも忙しい男である。

 ところでムスターシュの店は、アクチュエーターがレコードを抜き出してセットするジューク・ボックスなど、昔懐かしいメカに満ちている。イルマの鮮やかなグリーンのランジェリーやネスターの切ない演技ほどではないが、見逃せない小道具の一つである。

第48回『陽気なギャングが地球を回す』

第48回『陽気なギャングが地球を回す』 kat 2009年7月6日(月曜日)

 本作は、ミステリー作家伊坂幸太郎原作の同名小説を前田哲監督が映画化したもの。

 オープニング。某銀行で一人の銀行員が「爆弾が仕掛けられています。早く逃げてください!」と叫ぶや、人々はなだれを打ったように銀行から飛び出す。残ったのは男女4人。その内のひとり成瀬(大沢たかお)はそれが銀行の金を狙った狂言だと見破る。居合わせた4人は図らずもその銀行員の計画を阻止する。そうして知り合った4人、嘘を見抜く才能のある成瀬、スリの天才・久遠(松田翔太)、演説家・響野(佐藤浩市)、レーサー並みのドライビングテクニックと完璧な体内時計を持つ雪子(鈴木京香)は、万事休すの銀行員を見て、「自分たちならもっと上手くやれる」と銀行強盗を計画する。

 やりくちはこうだ。420秒後に迎えに来るという雪子を除く3人が銀行に押し入る。支店長以外をカウンターの外に追い出すと、響野がカウンターに立って演説を始める。久遠はカードキーなどを盗み、成瀬はいくつかのキーを支店長にかざして反応を見て、本物のキーを当てる。現金自動預け払い機(ATM)のストック部が空けられ、現金が取り出される。

 さてATMでは、たとえば紙幣を入れたとき、二つの紙幣分離ローラーで一枚一枚分離し摩擦駆動により、紙幣の真偽を識別する装置(バリデータ)に送る。ローラーにはある程度のグリップ力を持たせて空転せずに紙幣を送るよう、ウレタンゴムなどが使われる。規格外の偽札と判断されると、回転を逆転させ紙幣を戻す。

 響野が演説をしている間に、ATMだったり金庫だったりから現金を奪い、雪子の車で追っ手をかわし逃げおおせる4人だが、何者かに襲撃され現金を強奪され、奪還をもくろむ4人は…。原作のスピーディーな展開を、ホットな俳優陣がときに緊迫しときにコミカルに演じた一作。発明家(古田心太)の作るばかばかしい小物が意外にストーリーにからむので、見落とせない。

第49回『スタンド・バイ・ミー』

第49回『スタンド・バイ・ミー』 kat 2009年7月13日(月曜日)

 スティーブン・キング原作、ロブ・ライナー監督の本作は、森の奥にあるという事故死体を捜しに出かけた4人の少年たちの友情と訣別をノスタルジックに描いた作品である。アメリカの中学は9月から始まるとすると、ちょうど小学生最後の夏休みの話だろう。

 作家のゴーディー・ラチャンス(リチャード・ドレイファス)が少年時代の親友で弁護士になったクリス・チャンバースが刺殺された新聞記事を読んで回想したのは、オレゴン州の小さな町キャッスルロックでの小さな冒険旅行のこと。小学校を卒業した12歳のゴーディー(ウィル・ウィートン)は、3人の仲間と木の上に組み立てた小屋でカードや雑談に興じていたが、あるとき、行方不明になっている少年が、30kmだか40kmだか先の森の奥で列車にはねられ、死体が野ざらしになっているという話を聞きつけ、4人で捜索の旅に出る。ゴーディーは、フットボール選手として嘱望されていた兄(ジョン・キューザック)の事故死から立ち直れない両親に邪剣にされ、リーダー格で正義感の強いクリス(リバー・フェニックス)は、アル中の父、不良グループの兄という家庭環境から給食費を盗んだ容疑をかけられるなどで将来に不安を感じ、テディー(コリー・フェルドマン)はノルマンジー作戦の英雄ながら今は精神を病む父に屈折した感情を抱き、ちょっと太っちょのバーン(ジェリー・オコネル)は自分に自信がなく意気地がないと周囲からからかわれるなど、それぞれ問題をかかえながら、中学進学や就職などへの進路を前に、ひとつ時を過ごす。

 そんな4人は旅の途中、犬に追いかけられたり、沼にはまったり、夜にコヨーテに脅かされるなど、いろいろな目に遭う。広い河にかかった長い鉄橋を渡ろうというとき、慎重なゴーディーはレールを手で触り、耳を近づける。今のように軸受の異常を見る振動計などがない時代、機械にドライバーなどを当てて耳で聞いて異常がないか判断した。そんな感じで橋の半ばでレールに触れたゴーディーは、驚いて振り返る。車輪から伝わった振動でよもやとは思ったが、やはり汽車が煙を上げて近づいていたのだ。恐る恐る間から川面を見ながら枕木を伝っていた4人だが、汽車に追われ一目散に駆け出し…。さて、4人の旅の終着点やいかに。

 本作は、若くして逝ったリバー・フェニックスや『24』のキーファー・サザーランドが敵役として登場するなどオールスターキャストにして、ホラー作家スティーブン・キングの原作をハートフルに描いた、懐かしい友人を思い出させる一作である。

第50回『アポロ13』

第50回『アポロ13』kat 2009年7月21日(火曜日)