第49回 火災事故抑制に集客施設のスプリンクラー設置を望む
第49回 火災事故抑制に集客施設のスプリンクラー設置を望む7月5日大阪市此花区の雑居ビル1階にあるパチンコ店入り口付近から出火、店内にいた95人の客や従業員のうち、客3人と従業員1人が死亡し、客らビルにいた19人が重軽傷を負った。犯人は危険物取扱者の資格を持ち、揮発性が高く、火を近づけただけで一気に燃え広がる性質のガソリンをばら撒き、火をつけた。安全管理の知識を犯罪に逆用する行為に怒りを覚える。
大阪市消防局によると、市消防局から消防車など51台とヘリコプター1機が出動、出火から約20分で火はほぼ消し止められたが、パチンコ店の1階部分443m2がほぼ全焼した。今年3月に市消防局が店の立ち入り検査を実施した際には消火器や火災報知機など、消防法令で定められた設備は設けられていたが、スプリンクラーは設置されていなかった。この6階建て雑居ビルは延べ床面積が2,384m2で、消防法令が設置を義務付ける床面積3,000m2に達していなかったためだという。
スプリンクラーは、屋内の火災により生ずる熱または炎を感知し、天井などに設置されたスプリンクラーヘッドから自動的に放水して、初期消火を行う設備。閉鎖型と開放型があり、劇場、講堂など天井が高く、ヘッドの取り付け位置が8m以上ある場所では開放型スプリンクラー設備が用いられるが、一般的なビルの場合には閉鎖型スプリンクラー、中でも湿式タイプが用いられる。湿式閉鎖型スプリンクラーは配管内に水が充満している方式で、スプリンクラーヘッドの感熱部の可溶片が、熱のために溶けてシール部分が開き、湿式流水検知装置が作動して放水する仕組み。
安全工学の専門家によれば、同店にスプリンクラーが設置されていたら火の急激な広がりを抑制でき、消防が着くまでに全焼することはなかっただろうとしている。機械では一時はコストアップになっても軸受管理や潤滑管理のシステムを導入することで、生産性向上やメンテナンス費用削減でトータルコストダウンを図り、また稼動の信頼性向上を図っている。同様に遊技施設においてもスプリンクラー設置には導入コストがかかっても、安全性のシステムを構築されることで客が安心して時間を過ごせ、ひいては店に対する信頼性を高めビジネスの安定・向上につながるものと考えられないだろうか。
法の制約がないとはいえ、今回出火したパチンコ店のように多くの人が集まる場所では、スプリンクラーのように火災事故が起こった場合の被害を最小限にする、安全性向上のシステムを徹底させることを強く望む。