第32回 小型農機市場で技術革新?自ら作る食の安全
第32回 小型農機市場で技術革新?自ら作る食の安全Hondaが、鍋物でおなじみのカセットコンロ用ブタンガスを燃料とする小型耕運機「ピアンタ FV200」を3月3日に発売した。同社によれば、「食の安全」への関心の高まりや団塊世代の支持を背景に国内のガーデニングおよび家庭菜園市場は3,000万人以上に上ると言われる。市民農園の数もこの10年ほどで倍増、これに伴い小型耕運機市場も近年徐々に拡大し、05?08年でトラクターなど大型農機の出荷台数が2割程度縮小する一方で、小型農機市場は2004年の11万6,000台年から、2013年には約18万台に成長すると試算されている。Hondaは従来のガソリンエンジンなどから燃料交換を容易にしたことで、この成長する小型耕運機市場を掘り起こす考えだ。
小型耕運機は、耕運爪が車輪と同じ軸に取り付けられた車軸型、前に取り付けられたフロントロータリー型、後ろに取り付けられたロータリー型などがあるが、いずれもエンジンの回転とともに耕運爪が回転し、土を耕す。抵抗棒を上下させることで耕す深さや前進のスピードを制御する。
従来はガソリンエンジンや高出力タイプでディーゼルエンジンが使われてきたが、「給油時に手が汚れる」「保管が難しい」などが課題となっていた。これに対し家庭用カセットガス燃料は購入・使用・保管が容易で、装填もカセットコンロと同様に簡単。ビギナーでもより手軽にガーデニング(家庭園芸)や家庭菜園が楽しめる上、同排気量のガソリンエンジンに対し作業時間あたりのCO2排出量を約10%低減しているという。
Hondaの新製品は、ガソリンタイプとほぼ同じ仕様で、総排気量49.4 cm3の空冷4ストローク単気筒OHVエンジンは連続定格出力/回転数(kW[PS]/rpm)が1.0[1.4]/4,600、最大出力/回転数(kW[PS]/rpm)が1.1[1.5]/5,000で、遠心クラッチの採用により、スロットルレバーを握ると耕幅350/200?(内爪時)、爪径 250?のローターが135 rpmで回転し、放すと止まる。カセットボンベ1本(内容量250g)で約1時間稼働でき、約32坪(106m2)の耕運作業が可能なほか、スロットルレバーから手を放すとエンジン回転数が自動的に下がるため、低燃費を実現するとともに騒音を低減するとしている。
ビジネスとしての農業への回帰が取りざたされる中、こうした小規模な農作業から本格化を試行する層もいるかもしれない。微増とはいえ拡大する小型耕運機市場で、ビギナー層取り込みに有用なこうした技術のエッセンスは他分野でも転用できそうである。