第28回 エレベータの安全性向上で、保全、新設の市場あり
第28回 エレベータの安全性向上で、保全、新設の市場あり国土交通省は、エレベータなどで起きた重大事故の原因を専門に調べる事故対策委員会を設置する。事故機を調査し原因究明、結果を早期に公表して再発防止に役立てる狙いという。ここ数年、たしかにエレベータの事故が増えてきている。エレベータの法定耐用年数は17年で、国内ではモダニゼーション対象となるエレベータは10万台規模に達していて、毎年約1万台が積み上げられていくという。エレベータの新設台数が約2万台と頭打ちとなっている一方で、修理・改修市場は強含みとなっているのである。
一般にエレベータのかごは、昇降路上部に設置された巻き上げ機によりメインロープを介して駆動される。かごは、ガイドレールに沿って走るように、ローラとばねサスペンションを組み合わせた案内装置により案内される。これら機構のうち、労働安全衛生法では、事業者はエレベータについて1ヵ月ごとの1回定期に、(1)安全装置、(2)ワイヤーロープ、(3)ガイドレールなどについて自主検査を行わなければならないとしている。
また国土交通省社会資本整備審議会の建築分科会建築物等事故・災害対策部会での検討の結果、昨年4月1日付けでエレベータの定期検査報告制度が改正された。(1)ブレーキパッドの摩耗について、摩耗の程度を測定し検査結果表に測定値を明記(測定値により結果の判定を行う場合)するとともに、結果の判定基準を明確化する。(2)ワイヤロープの損傷については、目視により一定の基準(おおむねJISの基準を告示に規定することにより判定基準の法令上の位置づけを明確化)を満たしていることを検査する、というもの。ワイヤロープや、ブレーキパッド、ガイドレール、ローラなどの部材や潤滑、状態監視機器、計測評価機器などを包括したメンテナンス市場に関わる技術・製品への需要は高まりを見せてきている。
一方、東芝エレベータが台湾・台北市の世界最高層ビル「TAIPEI101」向けに納入した分速1,010mの世界最高速エレベータなど、新設エレベータでは高速化とともに安全な運行と同時に快適性、つまり走行中の振動や騒音を抑える技術が求められている。
一般的なエレベータではローラガイドによって、かごをレールに沿って走行させるとともに走行中の振動を吸収して乗り心地を確保しているが、このローラ式ではレールの表面状態などにより振動や騒音が発生してかご内に伝わることがあり、特に高速エレベータではこれらの乗り心地が確保されにくい。
そこで、東芝エレベータでは、磁気浮上技術によりガイドレールとの機械的な接触をなくし、レールの表面状態の影響を受けずに低騒音な案内装置とし、乗り心地を改善する磁気ガイドシステムの開発を進めている。
少子高齢化の進む背景からも、公共輸送の利便性を図るエレベータの安全性を確保する保全のシステム、また安全性とともに高速輸送を可能にする新規なシステムへの重要性はますます高まってきている。