第16回 JIMTOF2008が開催、高効率・環境対応加工のメカ技術を披露

第16回 JIMTOF2008が開催、高効率・環境対応加工のメカ技術を披露 kat 2008年11月10日(月曜日)

 第24回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2008)が10月30日~11月4日の6日間にわたり開催、累計14万2,000人が来場した。“地球に、未来に、優しいモノづくり”をテーマに、5軸制御マシニングセンター(MC)や旋盤とMCを組み合わせた複合加工機など工作機械、鍛圧機械、高速スピンドルや送り機構・テーブル機構など工作機器、MQL(最少量潤滑)などセミドライ給油機構など環境対応付帯装置、切削工具、研削・研磨工具、切削油、研削油など多くの製品・技術が展示された。

 5軸MCは、これまでのXYZ軸の直線3軸に、AB軸の回転2軸を加え5軸としたもの。3軸加工機ではワーク(工作物)の複数回段取り替えを必要としていた複雑形状の加工や多面加工が、5軸加工機ではワークを載せたテーブルが回転することで1回のチャッキングでこなせる(ワンチャッキング加工)。

 直線3軸の送り機構では、一般にサーボモータ+ボールねじの組み合わせで速度毎分50m以上、加速度0.5G以上、位置決め精度5μm以下の高速・高精度化が実現されている。ボールねじでは、新しいボール循環方式により毎分200mを超える高速送りと静音化を可能にした日本精工の「高速静音ボールねじ」なども搭載が進んでいる。

 しかし半導体や光学素子など微細加工・超精密加工を必要とするアプリケーションでは、10nm(1nmは10億分の1m)オーダー以下の位置決め精度が要求されており、サーボモータ+ボールねじに替わって非接触構造のリニアモータによるダイレクト駆動を採用する送り機構も増えてきている。これに対して、リニアモータとボールリテーナ入りLMガイドなどの直線転がり案内(直動案内)との組み合わせで最高速度毎秒4m、加減速2Gを可能にしている(THK)。

 一方、回転2軸の駆動ではウォームギヤなど減速機を用いる方法が一般的で、回転速度は毎分数十回程度でギヤのバックラッシュにより位置決め精度に限界があるなどの状態が続き、直線軸と回転軸の同期が必要な曲面加工では回転軸の性能限界が高速化を阻害していていた。これを解決するため、減速機を使わず直結して回転軸を駆動させるダイレクトドライブモーターを搭載して直線軸と回転軸の性能をバランスさせた5軸MCも森精機製作所などで出展された。

 高効率な加工を実現するには、こうした「送り系」の高速化に加え、加工工具を高速に回す「主軸系」(スピンドル)の高速化が求められる。これに対しては、たとえばジェイテクトが、オイルエア潤滑で、dmn値250万の高速性能と従来タイプ軸受より昇温を15%低減する昇温性能を両立した円筒ころ軸受をリリースしているほか、NTNが、軸受側面にグリース溜り間座を設け、運転による温度変化でグリースから分離した基油のみが自動的に軌道面に給油される微量潤滑供給機構によりメンテナンスフリーで定位置予圧・dmn値190万を可能とするアンギュラ玉軸受を発表していた。また、日本精工は、極微量オイルエア潤滑や油吸引・排油システムなどの新技術により、世界最高速の毎分50,000回転のスピンドルを参考出品していた。

 そのほか、MQLなど希薄潤滑下での耐摩耗など耐久性を高めたDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング被覆のエンドミルなど工具技術も含め、多くの機械要素技術の集積によって、マイクロマシンから航空・宇宙機器まであらゆる加工を実現する世界のマザーマシン・工作機械は高速、高精度、環境対応など多様なニーズに対応し続けている。