第06回 町工場の技術の結晶、人工衛星「まいど1号」が完成

第06回 町工場の技術の結晶、人工衛星「まいど1号」が完成 kat 2008年8月31日(日曜日)

 大阪府東大阪市などの中小企業9社でつくる東大阪宇宙開発協同組合(SOHLA)が開発していた小型衛星「まいど1号」(SOHLA-1)が完成、最終点検のため宇宙航空研究開発機構(JAXA)・筑波宇宙センター(茨城県つくば市)にトラックで運ばれた。

 「まいど1号」は一辺50cmの立方体で重さ約50kg。本体の組立て後、振動試験や管制設備のテストなどをしていた。温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT(ゴーサット)」と一緒に今冬、鹿児島県・種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられ、雷雲観測などの役割を担う予定だ。

 衛星は通常、その目的に応じて個別にゼロから作り始め、開発に3?10年の期間と数億?数百億円のコストが必要とされる。これに対し東京大学中須賀氏のアイデアにより、衛星の各機能をモジュール化し、モジュール(機能)ごとに1枚の「パネル」を製作、各パネルをつなぎ合わせるだけで機能する新しい汎用小型衛星衛星「PETSAT:Panel ExTension Satelliteの開発が、町工場の技術を結集して東京大学やJAXA、大阪府立大学などの協力を得て、進められていた。

 パネルは「CPU」、「太陽電池」、「メモリ」、「通信」、「姿勢制御」、「軌道制御」などの基本機能を担当するバスパネル、「光学」、「センサ」など個々のミッションに応じて異なるミッションパネルからなる。ある機能を実現するためパネルを必要な枚数だけ必要な形に組み合わせ、打上げ時には折りたたんでロケットに搭載する。こうしたモジュール化により大量生産、5,000万円?という低コスト化、1年以内という開発期間短縮を実現できるという。
 
 しかし宇宙空間では真空、急激な温度変化など、機械の可動部は厳しい環境下に置かれる。打上げ時に折りたたんである「まいど1号」が宇宙空間で正常に展開しミッションをクリアするには、真空環境にある展開部分のヒンジの潤滑がうまく機能するかどうかは重要な要件だ。また、周囲に貼り付けた太陽電池を動力源とするこの衛星では急激な温度変化に伴い太陽電池パネルが剥落しないかという、接着性能の検証も必要だろう。

 また、衛星の開発コスト低減にはめどがついたとしても、世界では通信などに使う中型・小型の商業衛星の1回の打上げ費用が数10億円規模なのに対し、H2Aロケットでの打上げ費用は100億円強という状況。日本の衛星ビジネスの飛躍のためにも、「打上げ費用を含めたユーザーの負担を1億円程度に抑えたい」としたPETSAT衛星の当初の目標へのアプローチに期待したい。