第152回 豊富な資源・地熱の有効活用を!

第152回 豊富な資源・地熱の有効活用を! コダマ 2011年11月27日(日曜日)

大容量地熱発電用二車室タービン(提供:三菱重工業)大容量地熱発電用二車室タービン(提供:三菱重工業)
 経済産業省は先ごろ、資源・燃料政策に関する学識経験者らとの意見交換会で国内資源として地熱開発の重要性を強調、企業が地質調査する際の補助制度や、発電のための井戸を掘る資金の債務保証制度を設けることを検討する方針を打ち出した。また、超党派「地熱発電普及推進議員連盟」も地熱発電の適地の約8割を占めるという自然公園内での開発規制の緩和を求める決議をまとめた。わが国では1970年代の石油ショック後に、地熱発電所の開発が相次いだが、開発コストが巨額に及ぶことから普及が進んでいなかった。原発政策が見直される中、グリーンエネルギーとして国内資源が豊富な地熱が注目、早期開発の必要性が高まった格好だ。
地熱発電所の構成機器例(提供:三菱重工業)地熱発電所の構成機器例(提供:三菱重工業)
 火山国の日本では、温泉に見られるように、地下深くの熱水など地熱資源に恵まれている。地熱発電はこの地下のマグマ溜まりのエネルギーで熱された熱水と水蒸気を地中から取り出し、そのエネルギーでタービンを回し発電する。具体的には地下約300mから約3000mのところに井戸(生産井)を掘り、その井戸から噴出する高温・高圧の熱水・蒸気を高圧汽水分離器(セパレータ)と低圧汽水分離器(フラッシャ)に導いて蒸気と熱水に分離する。ここで作られた清浄な蒸気がタービンに導入され、地熱エネルギーが機械エネルギーに変換され、さらにタービンに結合された発電機で電気エネルギーに変換される。

 地熱発電の効率向上につながる地熱タービンの性能・信頼性を向上させるには、地中から取り出された地熱流体から汽水分離された不凝縮ガス(硫化水素やCO2など)や塩分などを含む蒸気によるエロージョン(機械的作用による浸食)やコロージョン(化学的作用による腐食)に耐える高い耐食性を持たせなくてはならない。ブレード材には13%Cr鋼、ロータ材には1%Cr鋼などが使用されるが、さらにCr量を増加させたり適正な熱処理を施すなど、応力腐食割れを抑える材料技術が適用されている。

 さらに厳しい腐食環境や高い応力に耐える技術としては、ブレード材やロータ材にショットピーニングを施すことで、圧縮の残留応力を発生、従来の2倍以上の応力腐食割れへの耐性を実現している。また、特にブレード材では耐食性とともに高い耐エロージョン性が求められるが、耐エロージョンを高めるために材料硬度を高くすると応力腐食割れが劣化する。このため両特性を両立させるタングステンカーバイド系の溶射被膜が適用される。

 地熱は、原発20基分にあたる2000万kW分以上の資源量が国内にあるといわれている。その長期にわたるエネルギーをまかなえる資源量と、風力発電や太陽光発電に比べエネルギーの安定供給が期待される地熱発電の普及がより一層進むよう、上述のような地熱タービンなど機械技術のさらなる性能・信頼性向上に期待したい。