第144回 分析展・科学機器展が開催、材料・表面改質技術の発展を支える計測・評価技術

第144回 分析展・科学機器展が開催、材料・表面改質技術の発展を支える計測・評価技術 コダマ 2011年9月12日(月曜日)

 日本分析機器工業会と日本科学機器団体連合会は9月7日~9日、千葉・幕張の幕張メッセで、「来て・見て・わかる 確かな技術」をテーマに、「分析展2011 / 科学機器展2011」の合同展示会を開催した。分析、科学機器分野でアジア最大の展示会として、出展規模500社1,500小間での開催となった。同合同展は、“研究、開発、分析の入口から出口まで”の最新機器の情報を発信する展示会として2010年に第1回を開催、本年が2回目となる。

 試験・計測・分析機器は、先端の材料や表面改質技術の開発を支える基盤技術であるが、今回は特に、震災からの復興で期待される自然エネルギーなど、グリーン・イノベーションに貢献する評価機器・技術が多数出展された。

 近年、材料自身にない耐久性や潤滑性などの機械的特性を表層に付与する表面改質技術が長寿命化やオイルフリーなど、環境保全の観点からも注目されてきている。今回はこうした表面改質薄膜を評価する機器が多数展示されたので、その一端を紹介したい。
日本電子「SEMの検出器」日本電子「SEMの検出器」
 たとえば、細く絞った電子ビームを材料表面に入射して表層の数nm深さから出る二次電子を検出器でとらえて薄膜を画像化する走査型電子顕微鏡(SEM)がある。高分解能、高倍率で観察できることから、表面観察手法として多用されている。日本電子では、スーパーハイブリッド対物レンズにより、0.8nm (15kV)、1.2nm (1kV) の高い分解能が得られるサーマル電界放出形走査電子顕微鏡「JSM-7800F」を出展した。大電流を使うことで、分析精度や元素マップの品質を落とさずに、短時間で分析ができるほか、Gentle Beam 搭載の高性能電子光学系が、試料表面の微細構造を映し出す。非導電性試料でも金属のコーティングを施すことなしに像観察・分析できる。

 また試料に電子ビームを照射し、透過してきた電子を結像し、薄膜の界面組織などを高分解能で観察できる装置として透過型電子顕微鏡(TEM)がある。日本エフイー・アイでは、走査型TEM(STEM)「Titan G2 60-300」を出展した。TEMでは電子線が透過するように試料を薄膜に加工する必要があるが、加速電圧を60~300kVの広範囲で設定できるため、SEM- FIB(集束イオンビーム)などで作成された薄膜試料に最適な加速電圧条件で二次元や三次元での材料組織の評価や組成分析、状態分析が行える。STEMモードでは70pmの超高分解能を達成、これによりカーボンナノチューブの内部構造の観察が可能となっている。
リガク「SmartLab」リガク「SmartLab」
 このTEMのような微細加工が不要な装置として、X線の照射エリアが10~20㎜角と広く、TEMやSEMのように微小領域に限らず、広い領域での解析が可能なX線回折装置(XRD)がある。リガクでは、全自動水平型多目的X線回折装置「SmatrLab」を出展した。独自の光学系の使用により微小角入射することで、nm~μmレベルの薄膜の相組成や結晶構造のほか、多層膜の中間層や下地薄膜なども解析できるほか、表面均一性なども測定できる。オプションの搭載で、薄膜中のナノ粒子の形状や粒径分布なども分析できる。

 これら表面観察機器の一方で試験評価機器も展示された。たとえば、押込み荷重をμNオーダーで制御し圧子の押込み深さをnmの精度で測定、従来の硬さ試験機では不可能だった薄膜や極表面層の硬度測定を行う試験機として、極小押込み試験機(ナノインデンター)がある。東陽テクニカでは、独自のCSM法により深さ方向に硬度、ヤング率を連続で取り込むことのできるアジレント・テクノロジーズ社製ナノインデンター「G200システム」を展示した。超低荷重硬度・ヤング率が計測できる摩耗試験のほか、硬度・ヤング率深さプロファイルが得られる破壊靭性試験、ナノスクラッチによる疲労試験が1台で行えるという。
東陽テクニカ「G200システム」東陽テクニカ「G200システム」
 もちろん上述のような表面改質技術に限らず、材料技術自体でも、たとえば自動車の燃費向上、つまりCO2排出削減につながる軽量化が進められ、金属製部品から軽量化に有利な樹脂製部品へと置き換えが進んできている。すでに金属代替の自動車部品としてはポリアセタール樹脂やPPS樹脂、液晶ポリマーなどのエンジニアリングプラスチックが採用されているが、自動車部品としての長期的な耐摩耗性や剛性など機械的特性を評価し安全性を保障するため、硬さ試験や引っ張り試験、摩擦摩耗試験などが不可欠となっている。ハイブリッド車に続いて、電気自動車など新しいシステムが登場する中、高温への耐性など材料に求められる特性も変化している。グリーンエネルギーに関わるシステムなど、未知の使用領域での材料や表面改質層の性能を試験・評価し、信頼性を高め、適用を促進するうえで、試験・計測・分析機器の活躍の場はますます広がってきている。