第119回 ライフラインのさらなる安全信頼性向上を
第119回 ライフラインのさらなる安全信頼性向上を 厚生労働省の発表によると、全国の配水管のうち震度6強相当の揺れに耐える配水管は、3割程度との調査結果が出た。国は2013年までに水道管の耐震化率100%達成を目標としているが、耐震工事実施がまだまだ必要な現状が明らかになった。調査は、川や湖などの水源から浄水施設、配水池、給水地域を結ぶ全国の主要な水道管10万735kmを対象に水道管の材質や地盤の強さごとに調べた結果、震度6強の揺れでも継目が外れない構造とされたのは、全体の30.3%、3万483kmだった。
経年寿命に達するわが国の水道管
水道管は1970年代に設置されたものが多く、耐用年数40年といわれることから老朽化が進行し、経年寿命に達しているものも少なくないという。こうした配管の機械的強度の低下による破損や、地震による地盤変位に伴う配水管接合部の離脱により、長期間の断水に至るケースは非常に多くなってきている。そのため、厚生労働省では、地震に強い水道を目指したさらなる水道施設の耐震化の必要性から、水道施設・管路の耐震化の促進に向けた水道事業者の取組みを推進している。各水道関係団体と連携の下、2008年4月から2年間実施した「水道施設・管路耐震性改善運動」に続いて本年4月からは、「第2期水道施設・管路耐震性改善運動」を展開している。
水道管の耐震工事ではまず、アスファルトやコンクリートの路面をコンクリートカッターという機械で切断する。機械に搭載したOHVエンジンで円盤状のダイヤモンド砥粒ブレードを回し、クーラントとなる水をかけながらカットしていく。その後、地下1mくらいに埋設された水道管が現れるまで、土をミニショベルなどで掘り下げていく。経年菅から新しい耐震配水管にバイパスしながら置き換えていくという流れである。
ライフラインを断ち切られることのない耐震排水管を
それでは耐震配水管とはどういったものか。厚生労働省健康局の平成18年度「管路の耐震化に関する検討会」では、水道用ゴム輪形硬質塩化ビニル管RRロング継手(RRロング管)が、使用実績・期間ともに十分に耐震性能が検証されているとはいえないと注釈をつけながらも、RRロング管が基幹道路で耐震適合性のある管として採用可能と報告している。耐震適合性があるというのは、水道管を継手が抜けにくい構造である。
このRRロング管とは、継手部の受口部に±75㎜の伸縮性能を持つもので、差し口突部とロックリングの引っかかりで、震度6程度の地震動による地盤ひずみを吸収できるという。また、液状化地盤などでの側方流動(地盤永久ひずみ)や地割れ・段差沈下のような地盤破壊が生じる場合には、その接合部にさらに耐震金具を適用することで±1.5%の地盤永久ひずみを吸収できるとしている。
わが国の水道は普及率が97%を超え、世界に誇る安全な飲料水を供給する、市民生活、社会活動に不可欠なもの。1995年の阪神・淡路大震災では、68の市町村で水道施設の被害が出た。重要なライフラインが不測の事態で断ち切られることのないよう、国と地方自治体には現状の3割という耐震化率を早急に改善するよう取り組んでほしい。