第84回 改正省エネ法、改正環境確保条例で高まる省エネ、創エネ技術
第84回 改正省エネ法、改正環境確保条例で高まる省エネ、創エネ技術1年間のエネルギー使用量 (原油換算値)が合計で1,500kL以上の事業者を特定事業者と指定しエネルギー使用量の国への報告を義務づける「改正省エネ法」が、4月から施行された。使用量を把握した後、事業者はエネルギー消費効率を年平均1%ずつ改善していくことが努力目標となる。「エネルギーの使用の合理化に関する報告」いわゆる「省エネ法」は石油危機を契機に1979年、内外のエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保と、工場・事業場、輸送、建築物、機械器具についてのエネルギーの使用の合理化を総合的に進めるための必要な措置を講ずることなどを目的に制定されたが、今回の法改正により、これまでの工場・事業場単位のエネルギー管理から事業者単位(企業単位)でのエネルギー管理に変わる。これまでは大手企業が規制対象となったが、事業所(工場や店舗、テナントなど)をまとめて規制値を超える中小企業も、フランチャイズチェーン(FC)も、オフィスビルも規制対象となる。
一方、東京都は4月から「環境確保条例」を改正、エネルギー使用量が1,500kL以上の大規模事業所を対象に、CO2排出総量削減義務と排出量取引制度を国に先行して導入する。産業部門だけでなくオフィスビルなどの業務部門も削減対象とする世界初の都市型キャップ・アンド・トレード制度で、第1削減計画期間の2010~2014年度に工場が6%、オフィスビルは地域冷暖房の利用状況に応じて6%か8%の削減義務率を適用される。
いずれも共通するのはエネルギー使用量を管理することで、OKIや山武、富士フイルムなどでエネルギー消費を可視化するシステムが開発されている。
また、オフィスや店舗では使うエネルギーの大半が照明や空調ということから、消費電力を大幅に抑える発光ダイオード(LED)照明や、平日の昼間の運転は中央熱源による冷温水で空調を行い、夜間や休日などの運転はヒートポンプ運転で行うことで、熱負荷の状況と熱源の運転状態に応じた経済的な運転を可能にするヒートポンプ式空調機などの導入が進んできている。さらに工場では、使用するフォークリフトをハイブリッド車にすることで、回生エネルギーを回収・蓄電し電力消費とCO2排出量を大幅に抑えているという。
さらに、今回の両規制で対象となるエネルギーは化石燃料や熱、電気を対象とし、廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光などのクリーンエネルギーは対象とならないため、太陽光発電の導入も進む。オフィスビルではテナントに省エネ努力を求めつつ、創エネに努める。たとえば東京駅前の新丸の内ビルでは、青森の二叉風力開発などのグリーン電力を親会社の出光興産から購入、使用電力をまかなう計画だ。
東京都に続き、2011年には埼玉県でも大規模事業所を対象にしたCO2排出量規制が始まる。それらは厳格な数値目標を掲げ継続的な省エネやCO2削減を要求しており、上述のような省エネ・創エネの機器・システムのアレンジ、導入がますます求められるだろう。それに伴い、そこで使われる風力発電用軸受など各種機械部品やLED用サファイヤ基板など各種材料の需要拡大に拍車がかかっていくものと見られている。