第68回 セミコン・ジャパン2009、半導体関連分野に対応するメカ技術
第68回 セミコン・ジャパン2009、半導体関連分野に対応するメカ技術 半導体を中心とするマイクロエレクトロニクスの製造を支える装置・材料産業の総合イベント「セミコン・ジャパン2009」が12月2日~4日、千葉市の幕張メッセで開催された。同展では、LEDや太陽光発電などの需要拡大に合わせ回復基調にあり、さらに市場を広げつつある半導体分野で求められる高集積化、小型、高速、低消費電力、低コスト化のニーズに対して、露光装置から材料、加工技術、計測評価技術など、多くのソリューションが示された。
ICの高集積化とは電子回路パターンの線幅を微細化することで、現在は線幅32nm、22nmのプロセス確立に向け、特に前工程の中でもIC製造の中核技術である露光装置(ステッパー)の開発が激化している。露光装置最大手のオランダASMLは、真空紫外光の193nmより一桁以上短い13.5nmの極紫外線(EUV)を用い解像力を大幅向上するEUVリソグラフィを採用した装置で、ニコンはフッ化アルゴンエキシマレーザー(ArF)を使いレンズとウェハーの間を液体で満たすことで、従来と同じ露光波長を使いながら解像度を高める液浸リソグラフィーで2回露光(ダブルパターニング)を採用した装置で高集積化に臨む。
ステッパーで、レチクルのパターンを投影するレンズは1/4の縮小倍率では、レチクルステージはウェハーステージの4倍の速度でスキャン動作を行い、ウェハー上に微細なパターンを焼き付けていく。ステッパーでは1時間あたりに処理できるウェハー枚数をいう「スループット」の向上が課題であり、レチクルステージには露光を開始する位置に高速に移動し、高精度に位置決めする必要がある。
従来このステージには、サーボモータ+ボールねじ駆動と転がりの直線案内を組み合わせた機構が採用されていた。しかし、露光中の位置決め精度の誤差平均値は線幅の1/10以下とも言われ、現在の45nmプロセスではそうした接触機構の摩擦による振動などから、要求される位置決め精度、スキャン速度への対応が難しくなっていた。そこで現在はリニアモータ駆動として、エアで浮上させ非接触としたエアベアリング案内のステージが主流となっている。このステージを使ったステッパーでは、1時間あたり200枚といったスループットが実現されている。
また、ウェハーでは配線前のベアシリコンおよび配線後のデバイスウェハーで平坦化CMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング)処理が行われ、高容量化のための多層配線がなされるが、この研磨および研磨後の洗浄工程では回転機構に使われる軸受がCMPスラリーや洗浄液などにさらされる。このためこうした箇所では、軸受鋼に比べ腐食に強いステンレス軸受や、さらには窒化ケイ素などのセラミック軸受が活躍している。クリーン環境の保持から、また潤滑剤が機能しない環境であることなどから、固体潤滑としてPTFEの保持器を使うなどの工夫がなされた軸受製品も展示された。
加工技術では、シリコンウェハーの切断のほか、LEDの基板となるサファイヤの切断として有効な、電着ダイヤモンドワイヤなども出展、注目を集めた。
2020年に2009年比10兆円増の31兆円市場になるという半導体産業だが、さらに2020年に20兆円市場が見込まれるLED、同じく5兆円市場が見込まれる太陽電池など、半導体市場を押し上げる要因は多い。電気自動車の航続距離を延ばすキーテクノロジーとなるSiC(炭化ケイ素)パワー半導体などでは加工の効率化などが問題となっている。こうした課題を解決し半導体の市場をさらに拡大させる、メカ技術の発展に期待したい。