第65回 太陽電池普及に向け、長寿命・高信頼性の材料・表面改質技術開発が加速

第65回 太陽電池普及に向け、長寿命・高信頼性の材料・表面改質技術開発が加速 kat 2009年11月9日(月曜日)

提供:シャープ提供:シャープ 家庭などの太陽光発電の余剰分を電力会社がこれまでの2倍、1kWあたり48円(事務所や学校など非家庭用は同24円)で買い取る制度が、11月1日からスタートした。期間は買い取り開始から10年間。温室効果ガスの排出削減を進めるため、太陽光発電の普及を進めるねらいで、制度導入を当て込み太陽光パネルの購入者が急増、電機メーカーは増産体制に入っている。太陽光発電設備の価格は平均185万円程度(経済産業省調査)だが、経済産業省の試算では、国や自治体の設置補助を受けた場合、余剰電力を売った収入や電気代の節約効果を考えると約10年間で元が取れるとしている。

 しかし、この試算には、故障に伴いメンテナンス費用を負担する場合が考慮されていないだろう。実際に太陽電池モジュールは配線材や封止材の破損、太陽電池セルと配線材の接触不良などによる故障が多いという。こうした故障を防ぎ、高信頼性・町寿命の太陽電池の実現をめざし、材料技術開発が進んでいる。

提供:三菱樹脂提供:三菱樹脂 太陽電池は太陽電池セルとそれを搭載するパネル材で構成されるが、パネル材の主要構成材料としてセルモジュールを封止する封止樹脂と、セルモジュールおよび封止樹脂を保護する保護フィルム(バックシート)がある。たとえばバックシートには屋外環境への耐性が求められ、PVF(ポリフッ化ビニル樹脂)フィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが使われている。特に水蒸気の浸入によるセルの劣化を防ぐため耐加水分解性が求められ、PVFコスト競争力と供給力が高いが同性能で若干劣るPETフィルムでは、同性能を強化するコーティング加工などがなされている。アルミホイルをラミネートしたフィルムやシリカ(SiO2)を蒸着したフィルムなどがある。

 最近開発が活発化している、軽量で設置の自由度が高いフレキシブルなフィルム太陽電池では、表面ガラスの代わりに透明シートが使用され、耐加水分解性を含め耐久性が特に求められる。耐久性の向上という点では、耐摩耗性に優れつつ、シリコンと同様の半導体特性を持つ炭素系材料、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)を表面に被覆したフィルム太陽電池などの開発も進んできている(ナノテックなど)。

 産業技術総合研究所の太陽光発電研究センターでは先ごろ、先述の太陽電池モジュールの不具合要因を明確化し、信頼性、長寿命の太陽電池モジュールの実現をめざし、化学メーカー、部材メーカーを中心とする民間企業31社と共同で、「高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム」を発足した。三洋電機やシャープなどの太陽電池パネルメーカーが加盟する太陽光発電技術研究組合が連携機関として参画し意見交換を進め、現在の太陽電池モジュールの寿命は20年程度だが、2倍の40年をめざすとしている。

 太陽電池のさらなる普及に向け、高信頼性、長寿命を実現する材料・表面改質などの技術開発の進展に期待したい。