第52回 患者の安全性と医療従事者の作業軽減を図るシリンジポンプ技術
第52回 患者の安全性と医療従事者の作業軽減を図るシリンジポンプ技術テルモが、装置に注射器(シリンジ)を正しく装着できるよう、液晶表示部にシリンジ装着手順がイラストで表示され、確実な装着をサポートするシリンジポンプ「テルフュージョンシリンジポンプ35型」を発売した。シリンジポンプは、シリンジに充填された薬剤を一定流量で持続的に投与する装置で、手術中や術後の患者への薬剤投与量を精密に管理する時に使用されるが、 シリンジがポンプに正しく装着されていない状態で、ポンプが患者より高い位置に設置されている場合、薬剤が急速に注入されてしまう「サイフォニング」現象が起きる可能性が高いことが問題となっていた。新製品ではシリンジの装着が誤っている時にエラー音で知らせるだけなく、シリンジをワンタッチ着脱でき、正しく装着されるとOKサインで確認できる。テルモでは新製品がサイフォニングによる医療事故の防止につなげることができるとして、医療機関に採用を促していく構えだ。
シリンジポンプはモーター回転によりボールねじが回転し、それにより直線運動案内を行うスライダーがシリンジのプランジャ(押し子)を押すことで、薬剤を送り出す仕組み。送り検出センサーなども手伝って、流量0.1mL/h ステップ(0.1 ~ 100.0mL/h 時)、流量精度±3%以内(1.0mL/h 以上の流量で注入開始して1 時間以降の1 時間ごとの精度)を実現するボールねじ、スライダーの機械的レスポンス、精度が求められる。たとえば日本精工では、医薬品などの製造や研究開発の機器、システムを集めた展示会「インターフェックス」で、ボールねじとリニアガイドをユニット化した「モノキャリア」と高精度モーターの組合せで微量の液体を脈動なく一定量送るシリンジポンプを参考出品したが、これは使用者でのボールねじとスライダーの組み付け作業を軽減、シリンジポンプの薬剤投与の高精度化を狙うものであろう。
シリンジの思わぬ装着ミスによりサイフォニングという医療事故が起こる可能性がある。今回の新製品のような、患者の安全性をより向上し、医療従事者の作業上の、精神面の負担を軽減する技術開発に引き続き期待したい。