第37回『ハスラー2』
第37回『ハスラー2』本作は、ポール・ニューマン主演による『ハスラー』の続編で、日本にビリヤード・ブームを巻き起こしたマーチン・スコセッシ監督作品である。前作でヤクザまがいの胴元とのいさかいでハスラー稼業から足を洗ったエディ(ポール・ニューマン)は、ナインボールで天才的なキューさばきを見せ一方的に相手を打ち負かすヴィンセント(トム・クルーズ)の胴元となり、数ヵ月後のアトランティック・シティでの大会までの道すがら、プールバーをめぐり、賭けビリヤードでの荒稼ぎをもくろむ。しかし、素人を装って稼ぐというエディの指示に従わず勝ちにこだわるヴィンセントを見守るうち、エディの気持ちはいつしか現役ハスラーへと戻っていく。
エディが現役に復帰する前、視力の衰えを感じ、度付きサングラス(たぶんレイバン製)を作る場面がある。両目に据えられた機器にレンズを数枚入れ替え、継ぎ足し、セットして、位置を調節し、近視や乱視の度合いを測る。近年、眼科や眼鏡店に置いてある光学機器は、自動で高速レンズ切り替えを行うが、これは屈折測定であって、視力測定ではないらしい。もっとも最近は眼鏡やコンタクトレンズを作るよりほかに、角膜にエキシマレーザーを照射しその曲率を変えることで視力を矯正するレーシック手術という選択肢もある。レーザーを角膜に照射する部分の機器の衛生管理の不徹底から感染性角膜炎を引き起こすという事故があっても、眼鏡やコンタクトレンズに比べランニングコストが安いなどのメリットから、手術を受ける人は急増しているという。
さて、ポール・ニューマン扮するエディはサングラスをかけてプレーするようになるが、光量の加減ではかえって玉が見にくいのではないかと思う。というのも、オリジナルの『ハスラー』はモノクロ作品で、今見ると、せっかくのエディの華麗なキューさばきながら、実際何番の玉がポケットに入ったかが分かりにくいという難点がある。
きっと、『ハスラー』はビリヤードをテーマにしたストーリーを、『ハスラー2』はビリヤードのプレーを愉しむというのがいいのだろう。もちろん円熟味を増し本作でアカデミー主演男優賞を受賞したポール・ニューマンの演技の妙は見逃せない。