第29回 安全性と環境を両立する低燃費タイヤの開発に拍車

第29回 安全性と環境を両立する低燃費タイヤの開発に拍車 kat 2009年2月15日(日曜日)

 経済産業省( http://www.meti.go.jp )と国土交通省( http://www.mlit.go.jp )は、運輸部門のエネルギー消費効率の向上を目的に、自動車で使用されているタイヤについて「低燃費タイヤ等普及促進協議会」を設置、今後のタイヤに関する省エネ対策として転がり抵抗の測定方法の規格化などに取り組む。

 わが国運輸部門のエネルギー消費量は近年減少傾向に転じているものの、全体の約2割を占めている。また、国際エネルギー機関のレポートによれば、自動車の燃料燃焼により発生するエネルギーの約20%がタイヤの転がり抵抗によって消費されており、現在一部の新車で自動車の燃費基準達成に向けた燃費性能改善策の一環として自動車メーカーが転がり抵抗を下げた低燃費タイヤを選択したり、またタイヤメーカーが独自の低燃費タイヤの生産・販売を行うなどの取組みがなされている。

 一般にタイヤの転がり抵抗とブレーキ性能(特にウエット路面でのブレーキ性能)はトレードオフの関係にあり、転がり抵抗を増やしたハイパフォーマンスタイヤでは制動距離が短く、転がり抵抗を下げた低燃費タイヤでは制動距離が長くなる。これはトレッドゴムの粘弾性に依存する性質で、単に転がり抵抗を下げて低燃費化を図ろうとするだけでは安全性が損なわれることになる。

提供:HONDA提供:HONDA そこで、たとえばHONDAではタイヤ設置面を解析し、ブレーキには外側・内側の二つのトレッドショルダー部が主に機能し、定常走行時の燃費にはトレッドセンター部が大きく寄与することを解明。その3分割したトレッドのそれぞれの部位に最適なゴム材料を配することで、同じ転がり抵抗係数を持つタイヤに比べて制動距離を5m短縮、トレードオフの関係にある転がり抵抗と制動性能を高次元で向上させ、燃費も1.5?2%低減させている。

 しかし、将来的には安全性を確保した上でタイヤの転がり抵抗を半減することが要求されており、自動車メーカー、タイヤメーカー、材料メーカーの共同による開発が必要とされている。「低燃費タイヤ等普及促進協議会」設立を機に、関連業界が一丸となった安全性、環境保全改善の取り組みに期待したい。