第09回『スパイ・バウンド』
第09回『スパイ・バウンド』脱北者を装い逮捕された北朝鮮の女性スパイが実は韓国情報機関に北朝鮮の情報を提供したこともある二重スパイだった、とのニュースが報じられた。まさに韓国映画『シュリ』を地でいく話である。本作『スパイ・バウンド(スパイの絆)』は、モニカ・ベルッチとそのパートナーであるヴァンサン・カッセル共演のスパイサスペンス。フランスで実際に起きた、二人のスパイが一隻の船が沈没させた「虹の戦士号」事件。そのスパイの一人、ドミニク・プリウールの証言に基づく物語である。いったいこの世の中、何人の女スパイが暗躍しているのだろう。
モニカ・ベルッチ演じるフランス情報機関DGSEの女スパイ、リザは、大物武器商リポヴスキーの取引を中止するため、ヴァンサン・カッセル演じる同僚のジョルジュと夫婦を装いモロッコへ向かい「アニタ・ハンス号」を爆破したが、任務を終えたリザはジュネーブ空港で鞄から麻薬が見つかり逮捕、刑務所に服役中の、リポヴスキーの秘密を知りすぎた手下を暗殺する計画に使われる。組織にはめられたのだ。つまり、DGSEは自分たちに協力的でないリポヴスキーをけん制するために船を沈めただけで、実は裏で手を結んでいた。ジョルジュたちは、諜報員を最大限に利用しては簡単に使い捨てる組織に立ち向かう。
物語で、船の爆破計画を中止するよう要求していたCIA(アメリカ中央諜報局)が報復としてジョルジュの仲間の一人を始末する(たぶんDGSEが差し出したのだろう)。ジョルジュは組織の諫言を振り切り、CIAの女傭兵を暗殺しようと競技用自転車ロードレーサーに乗って街中へ…。武器はなんと、自転車用のエア・ポンプである。ロードレーサーのチューブラータイヤは、チューブ状のタイヤの中にチューブが縫いこまれた軽量タイヤ。マウンテンバイクのようなトレッドパターンを持たず、空気圧を高圧にできるため路面での転がり抵抗が小さく、高速性能に優れる。10BAR(10.2 kg/cm2)程度と高圧にできるポンプは不可欠。これに矢を仕込む。吹き矢の高速・高圧版である。速くて強力に食い込みそうだが、女傭兵はむちゃくちゃ強く、ポンプ兵器は手落とされて使われることがなかったのだが。
ところで、かの二重スパイも美女だったようだが、本作のモニカ・ベルッチも「イタリアの宝石」と呼ばれるほどの美女。その容貌もスパイの武器の一つなのであろうか。